| 傷物語 III 冷血編 |
これは、西尾維新の同題小説の映画版三部作の第三弾にして完結編。
吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードを助けた事で彼女の眷属の吸血鬼となってしまった阿良々木暦は、３人の吸血鬼ハンターを倒し、奪われたキスショットの四肢を奪還することに成功。
そして、能力を取り戻したキスショットは、人の血を吸い、肉を喰らう吸血鬼の本性を露わにする。
その姿に愕然とし、己の取り返しのつかない行為を悔やむ暦は、羽川翼の言葉に救われ、キスショットを倒す戦いに臨むことになるが……
この第三部は、前半でキスショットが見せた吸血鬼の本性に暦がショックを受けて絶望のどん底に突き落とされるのを描き、中盤は羽川翼によりパラダイムシフトがなされ、そしてキスショットとの決戦の後に意外な結末に辿り着く、と言う、ここに至って漸くドラマティックな展開を見せて、これはなかなか。
ＣＧによるリアル且つ独特な雰囲気の作品世界は相変わらず魅力十分で、中盤のパラダイムシフトの際の羽川翼のお約束のようなエロシーンは、今回は作品を壊してしまい兼ねない程にエスカレート――羽川翼を羞恥責めした挙げ句におっぱいタッチも出来なかった暦のヘタレっぷりには脱力でしたが――していますし、羽川のウザさも抑えられていて、クライマックスへ繋ぎとしてしっかり機能。
８３分と言うシリーズで最も長い上映時間を持て余す事なく見せており、これは予想以上の出来で、この三作目で大分印象をよくしました。
キスショットとの決着は、白黒（善悪）はっきりさせるものでも、お約束のハッピーエンドでもなく、「みんな不幸になる」と言う予想外の着地点。
いささか収まりの悪い終劇ではありますが、これは、そもそもこの物語が「化物語」の前日譚に相当し、これからシリーズが始まることを考えると仕方のない事かもしれません。
（２０１７年 １月 ６日 ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）
（作品データ）
■監督
新房昭之
■出演
阿良々木暦 ・・・ 神谷浩史
羽川翼 ・・・ 堀江由衣
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード ・・・ 坂本真綾
忍野メメ ・・・ 櫻井孝宏
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