ミス・シェパードをお手本に
これは、イギリスの劇作家アラン・ベネットの回想録を元にした舞台劇の映画化。
舞台版でも主演を務めた名女優、マギー・スミスが主演し、アラン・ベネット本人も本人役でカメオ出演しています。
ロンドン北部の古い住宅街、カムデンタウンに引っ越して来たアラン・ベネットは、路上に停めたバンの中で暮らす老婦人ミス・シェパードを知る。住民たちに親切にされても礼すら言わず、心配して声をかければ悪態をつく偏屈者だ。
ある日、住宅地の道路が駐車禁止となり、行き場を失ったミス・シェパードを放っておけなくなってしまったベネットは、自宅の駐車スペースの提供を申し出るのだが……
同性愛者で家庭を持たないベネットにとって、ミス・シェパードは厄介だけど捨て置けない、家族なような存在であったでしょう。そして、修道女であったが故に好きな音楽を諦めざるを得ず、自分に非のない事で脅迫者に怯える暮らしとなってしまったミス・シェパードの悲劇を生前に知ることもなかった事が、この物語を書かせた、と言うのは理解出来るのですが、その見せ方としてこれが適当なのかどうか……この悲劇を、喜劇として観るにはベネットの視点は余りに近く、かと言って、ミス・シェパードの悲劇を親身に受け止めるものでもありません。
舞台版からミス・シェパードを演じるマギー・スミスの演技には文句のつけようがありません――ただし、マギー・スミスに相応しい役かどうかは別ですが――し、実生活をネタと観る劇作家の自分、と言う作家と言う人種の二重人格ぶりを、アラン・ジェニングスがひとり二役で演じたり、実際にミス・シェパードがいた、カムデンタウンのその場所で撮影したり、と映画ならではの工夫が凝らされているのも判るのですが……どうにも話に乗れず、面白く思える部分もなかった、と言うのが率直な感想です。
また、邦題の「ミス・シェパードをお手本に」と言うのはこれまたどうにも納得出来ず――悲劇的な出来事により、世捨て人のようになった彼女の何処が「お手本」となるのでしょうか？
（２０１７年 １月 4日 シネマジャック＆ベティにて）
（作品データ）
■監督
ニコラス・ハイトナー
■出演
ミス・シェパード ・・・ マギー・スミス
アラン・ベネット ・・・ アレックス・ジェニングス
（その他のキャスト）
ジム・ブロードベント フランシス・デ・ラ・トゥーア ロジャー・アラム デボラ・フィンドレイ クレア・ハモンド クレア・フォイ
グウェン・テイラー ニコラス・バーンズ リチャード・グリフィス サミュエル・バーネット サミュエル・アンダーソン
スティーヴン・キャンベル・ムーア ドミニク・クーパー ジェイムズ・コーデン サッシャ・ダーワン アンドリュー・ノット
クライヴ・メリソン ジェイミー・パーカー ラッセル・トヴェイ アラン・ベネット
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