| 聖杯たちの騎士 |
これは、「ツリー・オブ・ライフ」や「トゥ・ザ・ワンダー」のテレンス・マリック監督の新作。
ロサンゼルスで暮らす脚本家のリック。メジャー作品から巨額のオファーを受けるなど成功を手中としながらも、家族は壊れ、結婚生活も上手く行かなかった。
豪華な暮らしと、美女との享楽的な日々の中で、リックは自分を見失い、人生の目的も見えなくなってしまい……
……と、ストーリーを説明したものの、これで筋を捕らえられているかどうかも判然としません。テレンス・マリック監督作品は「シン・レッド・ライン」以降を観ていますが、本作はこれまでの作品の中でもっとも物語性が希薄なのです。
そのモチーフとされているのは、新約聖書の中にある「真珠の歌」と言うエピソード――東方から真珠を求めてエジプトに旅した若者が、いつしか自分の使命を忘れてしまうという物語です。
映画は、「真珠の歌」を引用し、使命を忘れて人生を見失った男の姿を描いて行きます。
タイトルの「聖杯たちの騎士」とはタロットカードの絵柄のひとつで、映画は幾つかの章に分けられ、それぞれに「月」、「女教皇」、「吊され男」と言うタロットカードの絵柄に基づくタイトルが与えられています。
ただ、それぞれの章の内容が何を示しているのかは明示されず、これはタロットカード占いが示されたカードから“何か”を読み取るように、美しい映像とエピソードの断片から何かを得る事が求められるのでしょう。
出演者は豪華で、主演はクリスチャン・ベール。女性陣はケイト・ブランシェット、ナタリー・ポートマン、フリーダ・ピント、イモージェン・プーツと主役級がずらり。毎度の事ではありますが、これだけのスタ−俳優が出演を熱望するテレンス・マリック監督作品の魅力とは何なんだろうか、と思ってしまいます。
これだけの美女競演で、撮影がエマニュエル・ルベツキとくれば映像の魅力は大きく、映像詩としての魅力は確かにあります。
ただ、「物語」ではない「詩」としての作品に１１８分はいささか長く、途中で集中力が切れてしまったのが正直な所で、そんな所からも、これは観客を選ぶ作品だと思います。
（２０１６年 1月 ２日 ヒューマントラストシネマ渋谷にて）
（作品データ）
■監督
■出演
リック ・・・ クリスチャン・ベール
（その他のキャスト）
ケイト・ブランシェット ナタリー・ポートマン ブライアン・デネヒー アントニオ・バンデラス ウェス・ベントリー イザベル・ルーカス
テリーサ・パーマー フリーダ・ピント イモージェン・プーツ ピーター・マシーセン アーミン・ミューラー=スタール チェリー・ジョーンズ
マイケル・ウィンコット ケヴィン・コリガン ジェイソン・クラーク ジョエル・キナマン クリフトン・コリンズＪｒ． ニック・オファーマン
ジェイミー・ハリス デイン・デハーン シェー・ウィガム ライアン・オニール ブルース・ワグナー ジョスリン・ドナヒュー
ニッキー・ウィーラン ジョー・マンガニエロ トーマス・レノン ジョー・ロー・トゥルリオ ボー・ガレット カティア・ウィンター
ジェリー・ハウイー ニック・クロール ダニー・ストロング セルゲイ・ボドロフ イェルク・ヴィトマー ベン・キングズレー
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