ドント・ブリーズ

　これは、製作、サム・ライミ／監督、フェデ・アルバレスと言う「死霊のはらわた」コンビによるスリラー・サスペンス。

　デトロイトのスラムで暮らすロッキー。飲んだくれて娘に金をせびる母親に絶望し、妹を連れて街を出ようとする彼女には金が必要だった。でも、この街で暮らしを変えられる程の大金は簡単には手に入らない。ロッキーは恋人のマニー、そして彼女に片思いのアレックスの３人で空き巣で稼ぐものの大した稼ぎにはならない。
　そんなある日、マニーは故買屋から大金を自宅に隠し持っている老人の情報を得る。その老人は盲目の傷痍軍人で、数年前に娘を事故で亡くし、多額の示談金を得ていると言う。盲目の老人の一人暮らし、しかも、過疎区域で周囲には誰も住んでいない。セキュリティはアレックスが解除し、番犬は薬で眠らせる。現金を奪うことは容易い仕事に思えたが……

　この映画、強盗に入った若者たちが無力と思っていた住人から思わぬ反撃を食う……と言うありきたりのアイデアを、観客の予想を遙かに超える展開の物語によくぞ膨らませたもの。
　住人である盲目の元軍人は、決して超自然的な能力を持つ訳ではなく、それ故に、本作にホラー映画的な未知の恐怖、と言うものはなく、あくまで人間ｖｓ人間の図式に終始します。
　若者たち（と言うかロッキー）の、未来を変えようとして金に執着する執念、失われたものを取り返そうとする老人の執念……その激突はすさまじく、そして、老人が殺人も辞さない程に執着し、守り通そうとしたものが何だったのかが判る中盤の展開には驚かされます。
　
　また、ホラー的な恐怖描写は少ないのですが、見えない危機が迫るスリルに、サスペンスが延々と続き、終盤の一難去ってまた……と言うのにも都度びっくりさせられますし、何よりも心安まる暇がありません。
　映画は８８分と、最近の映画としては短めですが、老人宅侵入後はほぼノンストップで突っ走るサスペンスに、見終わってどっと疲れたのが正直な所。

　凡庸なアイデアを、考え抜いた工夫の数々と観客の予想もつかない展開、そして見事な演出で傑作スリラー・サスペンスに仕立てたこの映画……本国アメリカでは大ヒットしたそうで、既に続編製作も決定しているとか……

　（２０１６年　１２月２７日　川崎　チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督

フェデ・アルバレス　

　■出演

　ロッキー　・・・　ジェイン・レヴィ

（その他のキャスト）
　ディラン・ミネット　　ダニエル・ゾヴァット　　スティーヴン・ラング

　■コピー

この家から生きて脱出したければ、息をするな・・・　

　■Ｌｉｎｋ

http://www.dont-breathe.jp/　

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