風に濡れた女

　これは、日活ロマンポルノ生誕４５周年を記念したロマンポルノ・リブートプロジェクトのうちの１作。　これは「10分に一度カラミを入れれば後は自由」と言うロマンポルノの枠組みで、本作の塩田明彦始め、行定勲、白石和彌、園子温、中田秀夫ら５人の実力派監督が競作する、「映画の大喜利」と言われるプロジェクト。成人映画は一般映画館で上映されない現状で、ロマンポルノ作品を知る、貴重な機会だと思います。
　監督は「黄泉がえり」や「どろろ」の塩田明彦。出演は「甘い鞭」の間宮夕貴。

　都会の喧噪を離れ、地方の山中に立てた自作の小屋で静かな生活を営んでいる高介。
　ある日、廃品回収のため、リアカーを引いて海辺を歩いていた高介に、若い女が「一晩泊めて」と声をかけてくる。
　だが、それを無視する高介に、女は何故かまとわりつき……

　この映画、日常の中に突然飛び込んで来た野性的な美女が波乱を起こす、と言うもので、作りとしてはコメディ仕立てで気楽に観られる映画となっています。
　ヒロインの汐里を演じる間宮夕貴は、ほぼすっぴんでありながら、引き締まった体つきに美乳、若さ溢れる野性的な魅力を振り撒いて、ハマリ役。
　その一方で、永岡佑演じる高介は、こじらせ文学青年で、他にもアングラ劇団に、文学少女と、ロマンポルノ全盛期の’７０年代らしい設定を盛り込んでいるのも確信犯的と言うか、塩田明彦らしいと言うか……
　ただ、ロマンポルノが得意とした、女の情念や、ポルノならではの背徳感は希薄であり、気楽に観られるよさはあるものの、食い足りない感があるのも事実です。

　ラストシーンで匂わされる汐里の正体……確かに、それでは社会と言う首輪を外しただけの野良犬に太刀打ち出来る訳がなく、翻弄されるのも道理と言うものです。

　ただ、この企画、ベテランに撮らせるのではなく、かつてのロマンポルノがそうだったように、若手の登竜門になっていたらよかったのではないか、と思ったりもするのですが……
　

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■監督

塩田明彦　

　■出演

　高介　・・・　永岡佑

　汐里　・・・　間宮夕貴

（その他のキャスト）
　テイ龍進　　鈴木美智子　　中谷仁美　　加藤貴宏　　赤木悠真　　谷戸亮太
　池村匡紀　　前田峻輔　　大西輝卓

　■コピー

おいしい。　

　■Ｌｉｎｋ

http://www.nikkatsu-romanporno.com/reboot/wetwoman/

［戻る］