五日物語
ー３つの王国と３人の女−

　これは、「ゴモラ」のマッテオ・ガローネ監督が、イタリアに伝わる１７世紀の民話集「ペンタメローネ（五日物語）」の中の３話を１本の映画として映像化したもの。

　ひとつ目の話は、不妊に悩む王妃が、魔法使いの教えに従い、海の怪物の心臓を食べる。王妃はたちどころに妊娠するが、心臓を料理した下女もまた同時に妊娠してしまうのだった。
　ふたつ目の話は、老姉妹の姉がその美しい声に魅了された王に求婚される。困り果てた彼女は意を決して王と一夜を共にするが……
　みっつ目の話は、ロマンティックな恋愛と結婚を夢見る王女。ペットのノミにしか興味のない王は娘の結婚相手をクイズで決める事にするが、その答えを当てたのは山中に棲む鬼で……

　映画はひとつ目の話に始まり、その後を残りのエピソードが追いかけて行く構成。最後のシーンでは、全てのエピソードが一同に結末を迎えますが、それぞれが関係する訳ではなく、事実上オムニバス的な映画となっています。
　
　物語としてはいかにも古い民話らしく、欲望や強過ぎる願望は、世界を歪め、それが適えられたとしても、失うものも多い、と言う教訓を含むものとなっています。
　子供を熱望した王妃は、その代償に夫である王を失い、得られた息子からも愛を得る事はありませんし、若さを求めた老婆は若さと引き替えに肉親を失い、ロマンスを望んだ王女は結婚と引き替えに全てを失う――恋愛と結婚、妊娠と出産、そして若さと富、と言う、多くの女性が夢見るであろう願望をそれぞれのエピソードに落とし込んでいるのは皮肉なのか、昔も今も変わらぬ望みなのか……また、女性からすると、男たちの欲望や願望はどうなのだ、と言う声も出そうです。

　映像としてはかなり凝っていて、中世欧州世界の再現は見事ですし、実際の古城を舞台としたのも効果的。また、ＣＧ全盛の現代で敢えてミニチュアと模型を作った海の怪物のシーンなど、作風にあった映像世界は見物です。
　また、エロティックな場面も少なくない一方で、グロテスクな描写、悪趣味な描写も多く、生み出される猥雑な雰囲気は独特のものがあります。

　過度な望みには代償が必要と言うテーマだけに、何れのエピソードもめでたしめでたしで終わるものではありませんが、王妃や老婆に対する代償が厳しいものであった一方で、若者たちに希望を託す内容のせいか、後味は決して悪いものではありませんでした。
　

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■監督・製作・脚本

マッテオ・ガローネ　

　■出演

　王妃　・・・　サルマ・ハエック

　王　　 ・・・　ヴァンサン・カッセル

　王女　・・・　ビビー・ケイヴ

（その他のキャスト）
　トビー・ジョーンズ　　ジョン・C・ライリー　　シャーリー・ヘンダーソン　　ヘイレー・カーマイケル　　ステイシー・マーティン　　クリスチャン・リーズ
　ジョナ・リーズ　　ジェシー・ケイヴ　　ギヨーム・ドゥロネ　　ジゼルダ・ヴォローディ　　ジュゼッピーナ・チェルヴィッツィ　　ジョヴァンニ・カルカーニョ
　パオロ・リージ　　キャスリン・ハンター　　ケネス・コラード　　レナート・スカルパ　　エリック・マクレナン　　ニコラ・スローン　　
　アルバ・ロルヴァケル　　マッシモ・チェッケリーニ

　■コピー

それは、残酷なまでの女の“性<サガ>” 　

　■Ｌｉｎｋ

http://itsuka-monogatari.jp/　

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