| オケ老人！ |
これは、荒木源の同題小説を「ぱいかじ南海作戦」の細川徹監督が映画化したもの。
主演は杏で、豊富なキャリアを持つ彼女の印象からすると意外ですが、これが映画初主演作とのこと。
梅が岡高校の数学教師の小山千鶴は、コンサートで地元の市民オーケストラの演奏を聴いて感動。学生の頃、バイオリン演奏に打ち込んでいた日々を思い出し、思い切って、市民オーケストラ「梅が岡交響楽団」に入団を申し込む。ところが翌日、楽団の練習会場を訪ねてみると、集まってくるのは老人ばかり。
千鶴が聴いて感動したのは「梅ヶ丘フィルハーモニー」だったのだ。だが、新人の入団を喜ぶ老人たちに、千鶴は「間違えて入団した」と言い出せずに……
主演の杏ですが、モデルとして活動していただけに長身でスタイルよく、父親似の目力のある大きな目が印象的ではありましたが、これ程までに魅力ある美人だったとは……
喜怒哀楽の様々な感情を豊かな表情で演じ、コメディエンヌとしてもしっかり。そして、指揮者を務めるこの映画は正に視線の集中する役柄で、カメラも殆ど杏中心に写し、これは彼女を鑑賞するための映画、とも言えそうです。
また楽団員を演じるベテラン俳優の演技……と言うか芸もまた楽しい部分です。
タイトルの「オケ老人」は、“ボケ老人”と同じ語感を持ち、これが“老い”をネタとしたコメディである事を明示しています。
その予想通り、冒頭は“老人あるある”なネタを盛り込み、更に、その死さえもネタにする辺りはちょっと勘弁して欲しいものでしたが、これが中盤以降、意外にもスポ根映画ノリで楽しく観られるものとなっています。
結構、この辺りは真面目で、千鶴を教師（教えるプロ）とし、楽団自体が大きくなることと、時間をかけている事で、雑音でしかなかった演奏が聴かせられるレベルへ到達する事に説得力を持たせるなどの描写には好感を持てました。
また、「威風堂々」に「新世界」は個人的に好きな曲でもあり、その演奏もまた楽しめた部分です。
ただ、いささかご都合主義的な展開は気になる所ですし、ライバルが安易に心変わりし、それを受け入れる辺りも物足りません。また、中盤以降、千鶴が高校教師としての仕事を軽んじているのでは？と思える辺りも気になる所です。
キャストは魅力的ですし、音楽映画としての出来も悪くないだけに、ドラマ部分の安易さが勿体なく思えました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
細川徹
■出演
小山千鶴 ・・・ 杏
（その他のキャスト）
黒島結菜 坂口健太郎 左とん平 小松政夫 藤田弓子 石倉三郎 茅島成美 喜多道枝
森下能幸 萩原利久 フィリップ・エマール 飛永翼 光石研 笹野高史
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