ジェーン
これは、主演のナタリー・ポートマンが製作も務めた西部劇。
アメリカ西部の荒野の一軒家で、ジェーンは、夫のハムとひとり娘の３人で暮らしていた。
ある日、夫が撃たれて重傷を負って帰宅。過去に因縁のある悪党、ビショップ一味に見つけられて襲われたと聞かされたジェーンは、ハムを守って家に籠城することを決意する。
だがハムは起き上がる事も難しく、ジェーンひとりでは勝ち目がない。彼女は娘を知人に預けると、かつての恋人ダンに助けを請うのだが……
これはなかなか本格的な西部劇。乾いた荒野、照りつける日差し……それを映し出すざらついた映像は、その空気感までを描き出しているようです。
そんな典型的な西部劇の舞台に相応しく、物語の方も家族を守って悪党共と戦うと言うシンプルなもので、ここまでは定番通りなのですが、西部劇らしくないのは、戦うのが妻であり母でもある女性だと言うこと。
「トゥルー・グリッド」もそうでしたが、今や「西部」も荒くれ男の世界ではない、と言う事でしょう。
重傷を負った夫を護って妻が銃をとる、と言う物語の中で、面白い工夫は、ヒロインのジェーンが過去の恋人を頼る事。
南北戦争が切り裂いた若い恋人たちのメロドラマを過去に置き、かつて愛した男と、彼女を愛し、守ったが為に瀕死となった男との間で揺れ動く女心を、乾いた西部の風景と銃撃戦の裏に潜ませた物語は確かに見応えがあり、なるほど、これはナタリー・ポートマンが自ら製作して主演する訳です。
ジェーンを愛する２人の男の不器用な真っ直ぐさもいいし、珍しく厭らしい悪役を演じたユアン・マクレガーも意外な顔を見せます。
そして、この映画の華は何と言ってもナタリー・ポートマンでしょう。
この西部劇にしてメロドラマの映画の正に屋台骨となる存在感です。
もの足りなかったのは、クライマックスの銃撃戦が夜中と言う事もあって、展開がよく判らない部分があったことくらいでしょうか。
終盤の展開にはやや甘さも感じましたが、過去を清算して希望の地へ向かうラストシーンには、西部劇らしい爽やかさがありました。
ＰＳ
映画原題は「ＪＥＡＮ ＧＯＴ Ａ ＧＵＮ」で……邦題にしたら「ジェーンよ銃をとれ」としてもよさそうですが、さすがにそれでは別の物語がちらついてしまうでしょうか……
（２０１６年 １０月２３日 横浜 ムービルにて）
（作品データ）
■監督
ギャビン・オコナー
■出演
ジェーン ・・・ ナタリー・ポートマン
ダン ・・・ ジョエル・エドガートン
ハム ・・・ ノア・エメリッヒ
ビショップ ・・・ ユアン・マクレガー
（その他のキャスト）
ロドリゴ・サントロ ボイド・ホルブルック
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この愛だけは、奪わせない。
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