| コロニア |
これは、チリのピノチェト独裁政権下、実在したカルト集団を取り上げたサスペンス。
主演は、エマ・ワトソン。
チリで活動するキリスト教系慈善団体“コロニア・ディグニダ”はナチの残党であるパウル・シェーファーに率いられたカルト集団だった。彼らはナチ時代のノウハウを活かしてチリの秘密警察の拷問を下請けし、密かに絶大な権力を握っていた。
１９７３年、ドイツ人客室乗務員のレナは、フライト先のチリで、ジャーナリストの恋人ダニエルと束の間の逢瀬を楽しんでいた。
だが、軍事クーデターが発生、ダニエルは反政府組織に協力したとして連行されてしまう。
ダニエルが“コロニア・ディグニダ”に送り込まれた事を知ったレナは、ひとりコロニアに潜入する事を決めて……
映画は、反政府活動家で秘密警察に逮捕されてコミュニティに収容された恋人を救出しようとするものとなっています。
チリのピノチェト体制と言うのは、ほぼ地球の裏側に位置する日本人にはあまり馴染みがなく、その歴史の一幕を描いた映画として、興味深いものがありました。
ドイツ映画らしく、歴史と記録に基づき、リアルに構築されたコミュニティの描写もよく、ざらついた感じの映像で、いかにも’７０年代の空気を描き出す辺りもいい。ただ、この映画、ナチスの残党の描写にやや腰が引けた感があり、その政治的背景を見せず、カルト教団をホラーチックに描いた辺りは、現実感を希薄してしまっているようにも思え、物足りなさも感じました。
また、終盤の脱出劇のサスペンスの盛り上げはなかなかで、最後の空港シーンは「アルゴ」ばりのサスペンス。正に手に汗握るスリルを味あわせてくれます。
エマ・ワトソンの出演は、映画内容的にいかにも彼女らしい所でしょう。あと、ダニエル役はダニエル・ブリュームで、その痛々しいまでの熱演も印象に残ります。
ただ、メジャーな俳優を配したが為に、レイティングがかかるようなエグい描写にブレーキがかかり、結果として再現性を損なう事になったのでは、と思えるのは残念な所――ただ、エマ・ワトソンの出演がなければ日本での劇場公開などあり得なかった、とも言えるのですが……
ＰＳ
それでも日本では単館公開の小規模上映に止まる辺りが、現在の海外映画の置かれた状況の厳しさでしょうか。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
フロリアン・ガレンベルガー
■出演
レナ ・・・ エマ・ワトソン
ダニエル ・・・ ダニエル・ブリューム
ポール・シェーファー ・・・ ミカエル・ニクヴィスト
（その他のキャスト）
リチェンダ・ケアリー ヴィキー・クリーブス ジャンヌ・ヴェルナー ジュリアン・オヴェンデン
アウグスト・ツィルナー マルティン・ヴトケ
■コピー
必ず、私が、救い出す。
■Ｌｉｎｋ
［戻る］