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これは、原作・吉田修一、監督・李相日の「悪人」チームが再集結し、豪華キャストで描く群像劇。
物語は、映画「Ｉ ａｍ ＩＣＨＩＨＡＳＨＩ」でも描かれた外国人女性殺人犯の逃亡を念頭に、世田谷一家殺人事件などの要素を盛り込んだ、殺人事件の逃亡犯に関わる人々を描いたものとなります。
八王子の住宅地で、夫婦の惨殺遺体が見つかる。室内には、被害者の血で書かれた「怒」の文字……それから1年、未だ事件解決に至らない警察は、犯人は整形手術で人相を変えて逃亡しているものと睨んでいた。
その頃、千葉の漁港で働く洋平は、家出して風俗嬢となっていた娘の愛子を連れ戻す。その後、愛子は漁港で働き始めた田代という男と親密になっていくが、田代は過去を語らず、前の住所も偽りのものだった。
東京で大手広告代理店に勤める優馬。彼は同性愛者で、たまたま知り合った直人と肉体関係を持つようになり、住所不定の彼を家に招き入れる。
母と沖縄に引っ越してきた高校生の泉は、小さな無人島でひとりサバイバル生活をしている田中と出会う。泉は気兼ねなく話せる田中に心を開いていくが……
これは非常に力の入った映画です。
散漫になりがちなオムニバス形式ながら、豊かなエピソードの数々をテンション高く描く、その濃密さ。そして、それを演じる俳優からも、実際に綾野剛と同棲までした妻夫木聡の役作りや、酷いレイプシーンを含む、強姦被害者役を見事に演じた広瀬すずの覚悟、これだけのキャストの中でも確かな存在感を見せる佐久本宝など、圧倒されるような熱さを感じます。
（ただ、宮崎あおいはちょっとミスキャストでしょうか……７kgも増量するなど、相変わらず宮崎あおいの役作りは見事なのだけど、これは確かに二階堂ふみの役だと思いました）
物語は、凄惨な殺人事件の犯人捜し、と言うミステリーを軸に、３つの“素性の知れない男”の物語を並行して進めます。
この犯人が事件後に整形しており、現在の顔が判らないのがポイント。映画中のモンタージュ写真も、田代にも直人にも田中にも見えるように出来ており、観客もまた誰が犯人なのか？を推理しながら観る事になります。
ただ、この物語は、決してミステリーではなく、人を信じる事の難しさを描く、人間ドラマにあります。ミステリーとしてこの映画を観れば、犯人ではない２つのエピソードは観客をミスリードさせるものでしかないのですが、そこに描かれる、愛情と信頼のドラマの方に、この映画の見所があります。
ただ、納得出来なかったのは、殺人者の動機が、身勝手で屈折した、狂気に近い感情の爆発でしかなかった、と言う事。
これは映画の問題と言うよりも原作の問題かも知れませんが、この動機と、犯人の男の人間像にはどうにも納得が行かず……確かに、そんな男に命を奪われ、人生を狂わされた人々に「怒り」はあったでしょうが、それがタイトルの理由とも思えず……何とも釈然としないものが残った映画でした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
李相日
■出演
槙洋平 ・・・ 渡辺謙
槙愛子 ・・・ 宮崎あおい
田代哲也 ・・・ 松山ケンイチ
藤田優馬 ・・・ 妻夫木聡
大西直人 ・・・ 綾野剛
小宮山泉 ・・・ 広瀬すず
知念辰哉 ・・・ 佐久本宝
田中信吾 ・・・ 森山未來
（その他のキャスト）
ピエール瀧 三浦貴大 高畑充希 原日出子 池脇千鶴
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