秘密
ＴＨＥ ＴＯＰ ＳＥＣＲＥＴ
これは、清水玲子による同題の少女向けコミックを実写映画化したもの。
少女マンガと言うと、学園ラブコメが主流の印象ですが、これは女子に人気のボーイズ・ラブ風味こそあれ警察の科学捜査を題材にしたなかなか本格的なＳＦ作品で、監督に実写版「るろうに剣心」の大友啓史を起用、キャストも豪華で、なかなか力の入った映画となっています。
死者の脳をスキャンし生前の記憶を映像化するＭＲＩスキャナーが開発され、殺人事件の真相解明に活用すべく警視庁は科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」を設立。ＭＲＩ開発者でもある薪剛が室長を務める事になった。
その「第九」に配属された検死官の青木一行は、家族４人を殺害した死刑囚・露口浩一のＭＲＩ捜査を担当。家族の中で唯一遺体が発見されていない長女の行方を探るのだが……
数多ある少女マンガの映画化作品の中で、これはかなり意欲的な映画だとは思うのですが、どうもその意欲が空回りしているようで、描くべき内容を描き切れていない印象を受けました。
その最たるものが、正にキーとなる「ＭＲＩ」の描写。
ここは、映画冒頭にその凄さを見せておくべきでしょう。具体的には、冒頭の女子大生暴行殺人事件の犯人を鮮やかに特定、従来手法に頼るベテラン刑事をヘコませ、青木と共に観客にそのチートっぷりを見せつける。その上で、そのＭＲＩの弱みを突いて逃げ切ろうと言う犯罪者を描いて対立させ、サスペンスを盛り上げる……と言うのが定石ではないかと思います。
ところが、この映画は、そうした基本をお座なりにしてしまうので、ＭＲＩと薪の凄みが伝わらず、ただサイコパスな猟奇殺人犯の少女に翻弄されるだけに見えてしまい、サスペンスが盛り上がりません。
逆に、チート能力を持つ警察を翻弄するピカレスクロマンとして見ようにも、犯人少女の魅力に欠けますし――演じる織田梨沙は血まみれ殺人シーンに加え、濡れ場も演じるなど頑張ってはいるのですが……せめて二階堂ふみか小松菜奈が演じていれば、と言うのは贅沢か――、人間ドラマとしても深みに欠け、原作にあったボーイズラブ的な要素も希薄となっては、映画としての見所は何処にあるのでしょうか？
今年の夏の勝負作として力を入れて製作されているのが判るだけに、この出来映えは残念としか言い様がありません。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
大友啓史
■出演
青木一行 ・・・ 岡田将生
薪剛 ・・・ 生田斗真
（その他のキャスト）
吉川晃司 松坂桃李 織田梨沙 大倉孝二 木南晴夏 平山祐介 三浦誠己
泉澤祐希 望月歩 前野朋哉 小市慢太郎 栗山千明 リリー・フランキー
椎名桔平 大森南朋 みおり舞
■コピー
記憶に潜入せよ。
■Ｌｉｎｋ
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