ターザン
REBORN
これはお馴染み「ターザン」の実写版映画。
この映画で注目すべきは、ターザンがジョン・クレイトンとして英国に帰国した後の物語になっている事。Ｅ・Ｒ・バロウズによる原作は近年著作権が失効し、自由に物語を脚色出来るので、こうしたオリジナルストーリーが出来る様になって来た、と言う事でしょうか。
１９世紀末のロンドン。
貴族として生まれながらも、アフリカ・コンゴのジャングルで“ターザン”として育ったジョン・クレイトンだが、今や家督を継ぎ、英国貴族として妻ジェーンと暮らしていた。
だが、コンゴにおいてベルギー王国の不正な植民地支配が行われている、と言うアメリカ政府の使者ジョージ・ワシントン・ウィリアムズの要請を受け、英国貿易使としてジョンは再びコンゴを訪れる事となった。
ところが、それは“ターザン”への復讐を企む罠だった。ジェーンが攫われ、再びジャングルへ戻る事になったジョンは……
本作で、ターザンことジョン・クレイトンを演じるのはアレキサンダー・スカルスガルド。
１９０cmを超える長身にビルドアップされた肉体は正に“ジャングルの王”ターザンに相応しく、大規模セットとＣＧの合成によりリアルに再現されたジャングルを舞台に、３Ｄまで使って迫力のある映像を生み出す、２１世紀の全く新しい「ターザン」と言う触れ込みの映画ですが……これが、何と言うか痛快さの全くない展開で困ってしまいます。
主人公のジョンが、野生児と言うよりも英国貴族らしい知性を持つ人物として描かれるのは原作通りだとしても、画面は青暗く、物語の方は肉親を殺された復讐の連鎖に、国家の陰謀が絡められたダークで重い内容で、全く子供向けではありません。
その一方で、未だ黒人差別が当然の１９世紀のアメリカが、アフリカの植民地で他国の黒人奴隷取引を非難すると言うあり得ない設定にする（実際には、米国政府代表が黒人と言うことからしてなかった筈です）など、歴史的事実をねじ曲げている辺り、気になる人も少なくないのでは？と思います。
映画の見せ場としても、お馴染みのツタを使ってジャングルの木々の間を移動していくアクションは限られたもので、ジャングルに戻ったジョンが、兄弟同様に育ったゴリラに敵わずに這いつくばる、と言う描写は“ジャングルの王”のイメージを壊してしまうものでしょう。
クライマックスも、知性派の悪役との肉弾戦に苦戦するなど、さすがのターザンも貴族暮らしで身体が鈍ったか、と思わされるほどで、どうにも痛快さがありません。
確かに、今までにないターザン像を造り出しているのは判りますが……それが「こんなのターザンじゃない」となっては本末転倒のように思います。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
デヴィッド・イェーツ
■出演
ターザン／ジョン・クレイトン ・・・ アレクサンダー・スカルスガルド
ジェーン・クレイトン ・・・ マーゴット・ロビー
ジョージ・ワシントン・ウィリアムズ ・・・ サミュエル・L・ジャクソン
レオン・ロム ・・・ クリストフ・ヴァルツ
（その他のキャスト）
ジャイモン・ハンスゥ ジム・ブロードベント ローリー・J・セイパー クリスチャン・スティーヴンズ ハドリー・フレイザー
ジュネヴィーヴ・オライリー サイモン・ラッセル・ビール ユール・マシテン
■コピー
その男、英国貴族。またの名を、ターザン。
■Ｌｉｎｋ
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