これは、「フランシス・ハ」のノア・バームック監督が中年と若者の交流とズレを描くコメディ。

　ニューヨーク在住の４０代のドキュメンタリー映画監督のジョジュと映画プロデューサーのコーネリア夫妻。
　ジョシュは数年に渡って製作中のドキュメンタリー映画をなかなか完成させられずにおり、行き詰まりを感じる日々を過ごしていた。
　そんなある日、講師を務めていたアートスクールで、映画監督を志望するジェイミーと、彼の妻のダービーに声をかけられ、やがて夫婦で交流を持つようになる。
　自分を尊敬している、と言う若い夫婦との交流はジョシュを上機嫌にさせ、やがてジョシュはジェイミーの映画製作を手伝うようになり……

　この映画、中年夫婦が若夫婦と友人になって妙な若作りをするだけのコメディ、と思っていると裏切られます。
　ジェイミーがその本心を見せ始める中盤以降、物作りや人生について考えさせられる、意外にもシリアスな展開を見せるのです。
　
　それにしても、この映画が辛辣なのは、ジェイミーの抜け目なさや、商売っ気以上に、主人公のジョシュがどうにも“痛い”中年であること。
　クリエイターとして見れば、いかなる形にせよ、作品を完成させて世に問うた方が勝ち、理屈ばかり達者でも、何時まで経っても作品を完成させられないのではクリエーターとしては負け。
　ジェイミーのやり方にも問題がありますし、そこに憤るジョシュの気持ちも判るにせよ、成功する為の手段のひとつじゃないか、と言う若者側の言い分にも理があるのです――それでも「理屈」にこだわる辺りが中年の痛い所なのだ、と言う映画の語り口はなかなか辛辣で、これには身に覚えの在るひとが少なくないのではないでしょうか？まぁ、ジョシュと同じ４０代となった監督の自虐的なネタかも知れませんが……

　こうしたクリエイターとしての姿勢や、世代間ギャップ、更に夫婦の絆や子作りまでも盛り込んだ内容は、やや詰め込み過ぎで、まとまりの悪さを感じる部分もあります。
　それでも、知的かつスノビッシュなコメディの送り手として、ポスト・ウディ・アレンと評されるノア・バームック監督のセンスは感じました。


ＰＳ
　ちなみに本作は２０１４年に製作の映画。
　それが今頃公開、と言う事は、「スター・ウォーズ」出演で、アダム・ドライバーが注目されるようになって、出演作も注目されている、と言うことでしょう。
　「エクス・マキナ」もそうでしたが、やはり「スター・ウォーズ」は別格です。
　

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■製作・監督・脚本

ノア・バームバック　

　■出演

　ジョシュ　・・・　ベン・ステイラー
　コーネリア　・・・　ナオミ・ワッツ

　ジェイミー　・・・　アダム・ドライバー
　ダービー　 ・・・　アマンダ・サイフリッド

（その他のキャスト）
　チャールス・グローディ　　アダム・ホロヴィッツ

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