疑惑のチャンピオン
これは、自転車レースの最高峰「ツール・ド・フランス」で前人未踏の７連覇を達成したランス・アームストロングのドーピングスキャンダルを映画化したもの。
１９８３年、ツール・ド・フランスに初参戦したランス・アームストロングは、区間優勝を果たして注目を集める。
１９９６年、体調の異変に気づいたランスは、医師から精巣ガンを告知された。しかも、ガンは脳にまで転移しており、彼は絶望のどん底に突き落とされる――だが、彼は不屈の精神で治療に取り組み、驚くべき回復力で周囲を驚かせた。
それどころか、罹病以前でさえ成し遂げられなかったツール・ド・フランスを制するなど、その快進撃はとどまるところを知らない。
しかし、その復活劇の裏では、薬物よる人体改良を是とする医師による組織的なドーピングが行われていたのだった……
これは、多額の金と大きな名誉を生む現代スポーツの暗部を描く映画。
映画は、ランスが、病によるブランクと体力的などん底、と言う状況からのし上がっていく成功物語としての面白さを持ち、多くの情報によりリアルに再現されたスポーツ・ドーピングの実態、と言う内幕暴露ものの側面で興味惹き、更にドーピングがばれるかばれないか、秘密を守り切れるのか、と言うサスペンスで盛り上げます。
なるほど、これは確かに面白い。
また、ダウンヒルを猛スピードで駆ける自転車を、ドローンで追走して撮影したのであろう、上空の視点からのシーンなど、スピード感とダイナミズム満点の映像にも驚かされますし、記録映像と再現映像を合成して作り上げた臨場感溢れるシーンの数々にも感心します。
興味深いのは、登場人物の内面を描かず、語らせず、ただ、その状況を以て「何故、そうした」と言うのを描き出している事。
ランス個人の問題だけではなく、ランスにそれを迫った状況、そして、ドーピングを黙認した関係者たち……なるほど、これではドーピングと言う行為がなくならない訳です。
最後、ランス・アームストロング個人への断罪で終劇を迎えた辺りには物足りなさも感じましたが、現実としてもそこまで踏み込めていないのだから、それは仕方のない事でしょうか……
いずれにしても、現代スポーツの闇に踏み込む内容で、なかなか見応えのある映画でした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
スティーヴン・フリアーズ
■出演
ランス・アームストロング ・・・ ベン・フォスター
（その他のキャスト）
クリス・オダウド ギョーム・カネ ジェシー・プレモンス リー・ペイス ドゥニ・メノーシェ
エドワード・ホッグ ダスティン・ホフマン エレイン・キャシディ ローラ・ドネリー
ピーター・ワイト クリス・ラーキン
■コピー
勝利への底なしの欲望
■Ｌｉｎｋ
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