これは、クドカンこと宮藤官九郎監督４本目の長編劇場映画。
　この映画、今年の初めに公開予定でしたが、１月に起きたバス事故により公開が延期され、漸く上映となりました。

　同級生のひろ美に想いを寄せる高校生の大助は、修学旅行中のバスでひろ美の隣の席を確保したのだが、告白をする前にバスは谷底へ転落してしまう。
　やがて大助が目覚めると、そこは地獄。大助は事故で死亡してしまったのだ。
　そんな彼の前に、地獄専属ロックバンド「地獄図」を率いる赤鬼キラーＫが現れて……

　この映画、クドカン流のリアリティのある、いかにも現代の若者の日常っぽい台詞の応酬が地獄を舞台に繰り広げられるミスマッチ感が面白く、大助のあの手この手の“転生”への挑戦がハイテンポのコメディタッチで描かれます。
　地獄の描写ははっきり言って安っぽく、それこそバラエティ番組のコント並なのですが、この内容には違和感なし。いささかブラックな味付けもよく、笑えるギャグも盛り沢山。ロック好きなクドカンらしく、地獄パート・前半の展開は、ほぼロック・ミュージカルと言った趣です。
　そして、ドラマーでもある桐谷謙太とシシド・カフカのドラム対決、Ｃｈａｒと野村義男のギター対決など、クドカン、殆ど趣味でやっているような、悪のり気味の展開も面白い――ただし、オーバーメイクのせいで誰が誰やらわからないのがネックですが。
　そして、こんな内容でありながら、しっかり純愛・しっかり青春なドラマも作り込んでるのも美点です。

　ただ、クドカン、ショートフィルムやドラマの脚本には冴えを見せるのですが、長編映画となると長さを持て余している感があり、キラーＫのエピソードが語られる中盤以降、物語が発散気味となり、ぐだぐだな展開になってしまうのはいただけないところです。

　かなり趣味に走ったその内容は、映画としては疑問に感じる部分がありますが、確かに面白い事は面白く、クドカンの作風が好きで、その趣味に付き合えるのであれば、これは楽しい１本だと思います。
　

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

宮藤官九郎　

　■出演

　大助　・・・　神木隆之介

　キラーＫ　・・・　長瀬智也

　ひろ美　・・・　森川葵

（その他のキャスト）
　尾野真千子　　桐谷健太　　清野菜名　　古舘寛治　　皆川猿時　　シシド・カフカ　　清鬼姫
　古田新太　　宮沢りえ　　坂井真紀　　荒川良々　　瑛蓮, みうらじゅん　　Ｃｈａｒ　　野村義男
　ゴンゾー　　マーティ・フリードマン　　ＲＯＬＬＹ　　 快速東京　　木村充揮　　関本大介
　ジャスティス岩倉　　烏丸せつこ　　田口トモロヲ　　片桐仁　　小泉博康　　藤本賢一　　平井理央
　中村獅童

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