ノック・ノック
これは、「ホステル」や「グリーン・インフェルノ」の奇才、イーライ・ロス監督がキアヌ・リーブス主演で製作した映画。
妻子持ちには凄く怖い（はず）のスリラーと言えるでしょう。
建築家のエヴァンは、よき夫にしてよき父親。芸術家の美しい妻と、かわいい２人の子供らと恵まれた暮らしをしていた。
ある週末、バカンスで海岸に泊まりがけで出掛ける妻子を見送り、ひとり自宅で追い込み仕事をしていると、夜更けに雨でずぶ濡れになった２人の美女が玄関に立った。パーティーに招かれたものの、道に迷ってしまったらしい。困り果て、電話を貸して欲しいと言うふたりを自宅に招き入れた事から、エヴァンは天国と地獄を見る羽目になる……
この映画、１９７７年の「メイク・アップ」のリメイクとのこと。（「メイク・アップ」に出演していたコリーン・キャンプをカメオ出演させています）
「食人族」をリメイクした「グリーン・インフェルノ」もそうでしたが、かつてのＢ級ホラーを、現代に甦らせると言うイーライ・ロス監督の趣味全開、と言う所でしょうか？
美女のひとりジェネシスは清楚で知的な黒髪スレンダー、もうひとりのベルは金髪ベビーフェイスのスリムボイン。特にベルを演じたアナ・デ・アルマスが当初見せる天真爛漫なキュートさは、これはもうハート直撃の大威力。こんな２人が全裸で迫るのですから、これは陥落せずにいられるのがほぼ不可能、と言う無理難題でしょう。そして、一夜の天国を体験した後のしっぺ返しと言うには酷な展開は、これは妻子持ちには凄く怖いものではないでしょうか。
ちなみに、ジェネシス役のロレンツァ・イッツィは監督のイーライ・ロスの妻（撮影当時は婚約者）。
素っ裸での濃厚ラブシーンに、キアヌもさすがに「監督、君のフィアンセだろう？いいのか？」と訊いたのだとか……
物語としては不条理劇の一種で、主人公エヴァンを日常から引きはがし、否応なしに理不尽な状況に突っ込んで翻弄します。
その一方で、人物描写は極めて薄っぺらで、肝心のジェネシスとベルの動機さえ、微かに匂わせる程度で済まされていますが、これは恐らく確信犯。背景となるドラマを描かず、映画の中の行為だけを描く事で、男と家族が積み上げて来た全てを破壊する酷い描写を、あたかも喜劇のように、軽く、笑える仕上がりにしているのです。
そして、その中で浮き出すジェネシスとベルが見せる無作為な悪意――これはいかにも現代的で、現実にありそうな恐怖を感じさせるもの。
情けなく、みっともなく翻弄されるエヴァンの様に笑ってしまいつつ、そんな“悪意”が何時、自分に向かって来るかも判らない……これは、そんな現代社会のリアルな“恐怖”を形にしているように思えました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督・脚本
イーライ・ロス
■出演
エヴァン ・・・ キアヌ・リーブス
ジェネシス ・・・ ロレンツァ・イッツォ
ベル ・・・ アナ・デ・アルマス
（その他のキャスト）
コリーン・キャンプ
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訪れたのは快楽と地獄――
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