ヴィクトリア
これは１４０分の映画を、ワンカット・一気撮りしたと言うものでベルリン映画祭で技術賞を獲った野心作。
監督は「ルートヴィヒ」などで俳優としても活躍するセバスチャン・シッパー。
ベルリンのクラブで、激しく踊るヴィクトリア。明け方、踊り疲れて帰宅しようとしたヴィクトリアは、地元の若者４人組から声を掛けられる。
マドリッドから３ヶ月前にやって来たばかりでドイツ語にも不慣れなだった為、友人も作れずにいたヴィクトリアは、酒を手にした彼らとビルの屋上で楽しいひと時を過ごす。
ところがこの４人は危うい事情を抱えていた。裏社会の人物への借りを返すため、これからある“仕事”を実行しなくてはならないのだ……
１本の映画をワンカットで撮る、と言う作品はこれまでに例がない訳ではなく、昨年の「バードマン」も、ほぼワンカットでした。ただ、「バードマン」は別撮りしたカットをＣＧで合成した疑似ワンカットでしたが、この映画は凄い、手持ちカメラを使い、本当に一気に撮っています。
一気撮りした例としては「エルミタージュ幻想」がそうでしたが、この映画、街中を人物と共にカメラが動き回るアクション・サスペンスなのですから……実際、出ずっぱりのヒロインは１４０分、休憩なし。トイレも行けず、メイクも直せずだったそうです。
舞台はベルリンの市街で、人気のない午前４時からとは言え、こりゃよく撮ったものと思います。技術賞受賞にも納得です。
物語としては巻き込まれ型のサスペンスなのですが、手持ちのカメラがヴィクトリアに常に寄り添っているだけに、彼女と共にいるような臨場感が凄く、正に「巻き込まれた」感がありあり。
慣れぬ異国で言葉も十分に通じず、あれよあれよと言う間に事態が進展していくのには、正に手に汗握るサスペンスがありました。
また、ヴィクトリアの背景に、夢破れて故郷を捨ててきた自暴自棄っぷりを滲ませる辺りも上手い。
よく出来たサスペンスと思いますが、そこに至るまでの、前半のぐだぐだの会話劇にはうんざりさせられ、ワンカット撮影の弊害を感じる部分です。
また、後半は激しくカメラを振るので、映像酔いをしてしまいました。
（２０１６年 ６月１２日 シネマジャック＆ベティにて）
（作品データ）
■監督
セバスチャン・シッパー
■出演
ヴィクトリア ・・・ ライア・コスタ
（その他のキャスト）
フレデリク・ラウ フランツ・ロゴフスキ ブラック・イーイット マックス・マウフ
■コピー
全篇１４０分 ワンカットの衝撃
■Ｌｉｎｋ
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