| ６４ |
| ロクヨン |
後編
これは、横山秀夫のミステリ小説を映画化した映画の後編。
“ロクヨン”と呼ばれる昭和６４年の少女誘拐殺人事件の時効まで残り１年と迫った平成１４年１２月、県警管内で新たな誘拐事件が発生する。
まるで“ロクヨン”の模倣犯罪のような内容に、“ロクヨン”との関係性を感じた三上は、捜査情報を得ようと奔走する。
だが、刑事部は被害者の名前も明らかにせず、せっかく築いた記者クラブとの信頼関係も失われてしまう、と危惧した三上は……
ここに至って漸く物語は核心に辿り着き、誘拐事件の捜査本部の立ち上げや、事件報道など、いかにも横山秀夫らしい視点による物語展開に加え、過去の“ロクヨン”捜査時の不手際と、それにより犯人を取り逃がした失態を隠蔽した県警組織の闇に迫っていき、ドラマは盛り上がりを見せます。
ただ、盛り込まれるドラマティックな要素が余りに濃密で、それを前後編の分けた際のバランスが悪く、この後編はいささか慌ただしい印象がしたのが残念な所です。
そして、最大の問題が終盤の原作からの改変。
映画として、物語を気持ちよく終わらせるには犯人逮捕にまで至らなければならない、と言う思い込みが映画制作者にあったのでしょうか？映画は真犯人の逮捕まで描いてしまうのです。
しかも、三上に誘拐紛いの行為をさせ、犯人をおびき出した上に、最後は格闘の上に逮捕してしまう、と……正に暴挙としか言いようがない改変で、これには正直がっかりしました。
前半部であれだけ丁寧に広報の職務を描き、与えられた部署での職務を果たす、と言う事を警察官のあるべき姿として描きながら、この結末とは……慌ただしい展開故に放り出されたままのエピソードも引っかかりますし、何よりも原作の思わず胸が熱くなるラストシーンを思う度に、作品のテーマそのものをねじ曲げてしまった映画を残念に思います。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
瀬々敬久
■出演
三上義信 ・・・ 佐藤浩市
（その他のキャスト）
榮倉奈々 夏川結衣 緒形直人 窪田正孝 坂口健太郎 筒井道隆 鶴田真由 菅田俊 綾野剛
金井勇太 小澤征悦 菅原大吉 柄本佑 芳根京子 烏丸せつこ 椎名桔平 滝藤賢一 奥田瑛二
仲村トオル 吉岡秀隆 永瀬正敏 瑛太 三浦友和
■コピー
犯人は、まだ昭和にいる。
■Ｌｉｎｋ
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