ロイヤル・ナイト
英国王女の秘密の外出

　これは、欧州戦勝日に英国王室のエリザベス王女と妹マーガレットの２人がロンドンにお忍びで出掛けた、と言う史実に基づく映画。

　１９４５年５月８日、ロンドン。６年に及ぶ戦争が終わった欧州戦勝記念日の夜、 エリザベス王女と妹マーガレットの２人は国王ジョージ６世の許しを得て、生まれて初めてお忍びでバッキンガム宮殿を出る。
　だが、それはお目付役付きの舞踏会への出席でしかなかった。当然、納得できない姉妹はお目付役の将校が目を離した隙に、会場を抜け出して街へと飛び出してしまう。
　喧噪の中で妹とはぐれてしまったエリザベスは空軍兵士のジャックに助けられ、妹を探すのだが……

　この映画、史実に基づいた、リアル「ローマの休日」と言った所でしょうか。また、映画「英国王のスピーチ」で描かれた家族のその後、としても面白く見られると思います。
　エリザベスを演じるのはサラ・ガトン。美人ではあるものの細面のキツネ顔で、当時１８歳のエリザベスを演じるのはどうかな、とも思いましたが、当時のエリザベスの写真を見ると確かに面持ちは似た部分があり、納得です。
　
　内容としては、相当に脚色されており、なおかつコメディ仕立て。現在の女王の若き日を描くと言うのにこの遠慮のなさは、さすが開かれた王室を自認するイギリスらしい所でしょう。
　また、マーガレットを酔いつぶして貞操を奪おうと言う不届き者が、王家に忠誠を誓っているはずの軍の将校で、その危機を救うのが娼館の主であるならず者、と言う皮肉もまたイギリスらしい所でしょうか。　
　そして、予告編でも使われた、ジャックを取り押さえようとする憲兵を阻止しようと、エリザベスが
　「エリザベス王女です！」
　と叫んだ瞬間に居合わせた将校も憲兵も直立不動で全員敬礼、のシーンには痛快さがありました。

　終盤、エリザベスが、一夜の冒険を共にしたジャックに、
　「自分もパリに行きたい。カフェでのんびりと過ごして、エッフェル塔にも登って、シャンゼリゼ通りを散策して――」
　と女の子らしい夢を語るのだけど、彼女にはそれが叶わぬ夢だと言う事が判っているんだなぁ、と悟った瞬間に涙してしまいました。
　何故なら王位継承権１位のエリザベスにとって（実際、この数年後には女王になる）、「自由」なんてのは、もう金輪際ないのだから……

　ドタバタコメディの可笑しさに、そんなせつない描写も併せ持つ、夢のような一夜の物語。これは楽しい映画です。

　

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■監督

ジュリアン・ジャロルド　

　■出演

　エリザベス　・・・　サラ・ガトン

　マーガレット　・・・　ベル・パウリー

　ジョージ６世　・・・　ルパート・エヴェレット
　エリザベス王妃　・・・　エミリー・ワトソン
　
　ジャック　・・・　ジャック・レイナー

（その他のキャスト）
　ロジャー・アラム

　■コピー

ティアラを置いた。世界が輝いた。　

　■Ｌｉｎｋ

http://gaga.ne.jp/royalnight/　

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