植物図鑑
運命の恋、ひろいました
これは、有川浩の同題小説を映画化したもの。
主演は高畑光希に、「ＥＸＩＥＬ」の岩田剛典。
不動産会社で働くさやかは、ある晩、アパートの駐輪場で行倒れている青年と出会った。
「お嬢さん、よかったら僕を拾ってくれませんか？しつけの出来た子です。噛みません」
と言う青年を“拾い”、一晩泊めたさやかだったが、翌朝、彼の作った朝食の美味しさに思わず引き留めてしまう。
そうしてさやかの奇妙な同棲生活が始まった……
原作小説は、有川浩なので勿論恋愛ものなのですが、植物に詳しく料理上手な彼の指導による「狩り」と称する野草摘みと、その料理法の蘊蓄が面白く、確かにこれはちょっと変わった「植物図鑑」だなぁ、と言う印象でした。
ですが、映画の方は、完全に女性向け。蘊蓄は削られ、料理もまた同様（「のびるのパスタ」の完成を見せないのは肩透かしもいい所）。その代わりに女性向けサービスカットが増やされて――男目線だと、岩田剛典の笑顔のアップなど勘弁して欲しいのが正直な所だったり……
また、原作のイメージからすると、ヒロインのさやかを演じるのに、高畑充希は子供っぽ過ぎます。
実際“拾った”男をそのまま“飼う”なんてのは、同棲経験もあって、それなりに男性に対処出来る年齢の女性でないと出来ないだろうし、原作もそんな感じでした。むしろ、彼よりも年上のお姉さんでよかったくらいで、これはミスキャストではないでしょうか？
原作イメージからは、飾らず、質素でズボラ、と言うさやかの性格的にも長澤まさみが演じればぴったりだったのになぁ、と思ってしまいました。（松竹映画なので、長澤まさみは起用しようがないのですが）
あと、さやかの職場がパワハラの横行するブラック企業、客もセクハラ・パワハラの変態客ばかりと言う耐え難い環境で、それ故に、恋愛にヒロインを逃避させる（ように見える）映画の作りもまた嫌らしく、それがさやかが変わる事で変わって行く、と言う展開にもならない点も気になった所です。
他にも、岩田剛典の演技が拙いとか、さやかの好意を寄せる会社先輩に魅力がなく恋愛サスペンスにもならない（これも、向井理辺りが演じていれば……）とか、終盤でぐだぐだになる（……のは原作もそうですが）展開とか、あちこち気になる部分だらけで、映画化としては決して上手く行っていないものの、それでも終盤の展開で思わず泣かされてしまったのですから……有川浩、やっぱりこの人の力量は半端じゃないわ、とあらためて思わされました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
三木康一郎
■出演
河野さやか ・・・ 高畑光希
日下部樹 ・・・ 岩田剛典
（その他のキャスト）
阿部丈二 今井華 矢澤恵里香 相島一之 酒井敏也 木下隆之
ダンカン 大和田伸也 宮崎美子
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