これは「キサラギ」や「ＡＬＷＡＹＳ　三丁目の夕日」などの脚本で高い評価を得ている脚本家・古沢良太の劇場版オリジナルストーリーを金子修介監督が映画化したもの。

　売れない芸人、マイティ丸山に妙な仕事の依頼が入った。
　行方不明のピアノ教師を探して欲しいと言う、音楽学校に通う少女の依頼だ。この仕事を芸能プロの社長が引き受けてしまい、丸山はお門違いの探偵業をすることになる。
　実は、丸山のかつての相方である仙石和彦は残留思念を読み取る特殊能力を持っており、少女は、その能力を本物と見込んで依頼に来たのだった。
　だが、仙石その能力のせいで極度の人間不信と人間嫌いに陥り、芸人稼業から引退していて…… 　

　仙石和彦を演じるのは、現代劇は初めてとなる野村萬斎。常人とは違う、確かな存在感を見せていますし、宮迫博之演じる丸山との凸凹コンビもいい。
　また、依頼人の少女を演じた杉咲花は高校生には見えない幼さだし、事件の鍵を握る回想シーンの少女など、金子監督の“少女愛好”趣味も目立つ特徴と思います。
　
　この映画の特色である“物から思念を読み取る”能力や、犯人の正体（ただ、観客をミスリードさせる“ひっかけ”はちょっと露骨でしたが）など、ビジュアルインパクトもある設定の巧みさは、さすが古沢良太と言う所であり、この映画が野村萬斎と共にその脚本を売りにしているのも理解出来ます。
　しかし、惜しいのは、このアイデアと脚本を活かす、その見せ方。
　能力の見せ方にはもう少し工夫が欲しい所ですし、クライマクスで突如、読み取った思念を他人に見せると言う能力の拡大を伏線なしで見せるのもご都合主義的に見えてよろしくない所。
　物語の骨子としては、その異能故に人間不信に陥った男が、人を想う純な気持ちに触れて立ち直る所にあると思うのですが、それが、仙石がピアノ教師に抱いた横恋慕にしか見えない辺りも物足りなく思えました。
　　

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■監督

　■出演

　仙石 和彦　・・・　野村萬斎

　丸山 竜司　・・・　宮迫博之　

　秋山 亜美　・・・　杉咲花

　沢村 雪絵　・・・　木村文乃

（その他のキャスト）
　安田章大　　ちすん　　梶原善　　風間杜夫　　高畑淳子　　福本愛菜　　岩田さゆり　　
　北島美香　　峯村リエ　　嶋田久作　　絲木健汰　　篠原悠伸　　高島豪志

　■コピー

真実は、この「手」が知っている。　

　■Ｌｉｎｋ

http://www.scanner-movie.jp/　

［戻る］