シビル・ウォー
キャプテン★アメリカ
これは、「キャプテン・アメリカ」シリーズの第三弾で、前作「ウィンター・ソルジャー」の結末を描くものであると同時に、クリス・エヴァンス演じる「キャプテン・アメリカ」シリーズの最終作であるとされています。
そして、本作は「アベンジャーズ３」の布石となるもので、マーベル・ヒーローの多くが顔を出すものとなっています。
数々の危機から世界を救ったアベンジャーズ。
だが、その度に甚大な被害をもたらす彼らの強大な力を危惧する国際社会は、アベンジャーズを国連の管理下に置く「ソコヴィア協定」を提唱し、アベンジャーズに署名を求める。
自分がよかれと思って行った「ウルトロン計画」でソコヴィアの破壊を招いたトニー・スタークが協定に賛同、それに同意するメンバーもいる一方で、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースは署名を拒否し……
この映画、シビル・ウォー（＝内戦）と言うサブタイトルがついている事から判るように、その最大の戦いはアベンジャーズ内の内紛であり、実質的に「キャプテン・アメリカｖｓアイアンマン」と言う内容となっています。
（むしろ「キャプテン・アメリカ」と言うよりも「アベンジャーズ」の番外編と言うのが相応しいのでは……？）
しかし、見応えは充分。
これだけのヒーローが集結しながら、前作「ウィンター・ソルジャー」から続く物語に決着をつけ、新メンバーにもしっかり見せ場を作ります。
“大人の事情”で、これまで映画「アベンジャーズ」には登場出来なかったスパイダーマンも漸く登場（しかし、彼を予告編で出してしまうのは見せ過ぎだと思う）――と、言う事は「アメイジング・スパイダーマン」シリーズは２作で終了のようですが――
そして、最大のドラマとなるのは、スティーブとトニーの対立。
スティーブは、アベンジャーズ随一を自負する愛国心の持ち主で、己の“正義”に自信のある一方で、国家に裏切られた過去から、有象無象の人の集まりである“組織”を信用しません。
トニーの方は、過去に幾度も自分の為した事が悪用されて多くの不幸を生んだ経験から、人は間違いを犯すものと言う事を身に染みて理解しており、それを正す社会正義の方に重きを置いています。
これは、「銀河英雄伝説」がそのテーマとした「権力集中（独裁主義）か、主権在民（民主主義）のどちらがよいのか？」と言う問いと等しいものであり、その結論は簡単に出せるものではありません。
しかも、物語としては、またしてもトニーは間違いを犯してしまい、更に、個人的な復讐が事態を悪化させる、と言う事と、復讐が新たな復讐の原因を生む“復讐の連鎖”の空しさまでも描きます。
そして、その“復讐の連鎖”を絶つ為に、あの「正義の人」のキャプテン・アメリカが、友に真実を伏せていた、と事実によって、彼の行う“正義”もまた決して裏表のないものではない、とするに至っては、その物語の“深化”に唸らされます。
勿論、娯楽性の高さも文句なしで、飛行場でのヒーロー決戦では、それぞれの得意技を活かしての激突を混乱させる事なく描いています。
手の内を知った同士が「本気でやれよ！」とぶつかれば、新顔が思わぬ技で翻弄するなど見せ場の連続。
アクション中の軽口の叩き合いも面白いし、スパイダーマンが「『帝国の逆襲』知ってる？」と言って「アイツ、歳幾つだ？」と突っ込まれるのには笑いました。
撮影や演出にも新たな工夫が盛り込まれ、２時間半に迫る時間を長いと感じさせません。
こうなると、この先に必ずある、現在の“マーベル・ユニバース”の総決算となる「アベンジャーズ３」も楽しみです。
ただ、このお馴染みの面子もさよならで、新たなキャストによりリブートされる事には寂しさもありますが……
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
アンソニー・ルッソ／ジョー・ルッソ
■出演
スティーブ・ロジャース＝キャプテン・アメリカ ・・・ クリス・エヴァンス
トニー・スターク＝アイアンマン ・・・ ロバート・ダウニーＪｒ．
（その他のキャスト）
スカーレット・ヨハンソン セバスチャン・スタン アンソニー・マッキー ドン・チードル ジェレミー・レナー
チャドウィック・ボーズマン ポール・ベタニー エリザベス・オルセン ポール・ラッド エミリー・ヴァンキャンプ
トム・ホランド フランク・グリロ ウィリアム・ハート ダニエル・ブリュール マーティン・フリーマン
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友情が、友情を引き裂く――
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