Ｍｒ．ホームズ
名探偵最後の事件
これは、名優、イアン・マッケランが老齢となったかつての名探偵、シャーロック・ホームズを演じるミステリー。
探偵業を引退してより３０年、今やサセックスの田舎で趣味で養蜂をやりながら隠遁生活を送るシャーロック・ホームズ、９３歳。
ホームズは、探偵を引退するきっかけとなった最後の事件を書き留めておくため、過去の出来事を思い起こそうとしていたが、記憶力はすっかり衰え、筆は遅々として進まなかった。家政婦の息子、ロジャーは、そんなホームズの物語に興味を持ち、彼の物語の最初の読者となるのだが……
「ミステリー」とはあるものの、これを、名探偵の活躍する推理モノ、と考えるといささか肩透かしを食らう事と思います。
これは、名探偵が最後に犯した失敗……謎を解き明かし、真実を明らかにしても、解決しない問題がある、と言う、ある意味、“名探偵”を否定するようなドラマを描き、事実、そのショックでホームズは探偵業を引退している、と言う事になっています。
物語は、そこから３０年後の年老いたホームズにその事件を思い出させ、結果としてホームズに、人間らしい“決断”をさせると言う、人と人生を考えさせるドラマを描き、それをイアン・マッケランがさすがの存在感で演じるのですが、そのドラマに見応えはあるものの、これをミステリーとは言い難いと思います。
ただ、映画の描く世界はなかなか面白い。
この世界、コナン・ドイルではなく、引退したワトソンが小説「シャーロック・ホームズ」を描いた、と言う世界で、ホームズが実在する、と言う設定はシャーロキアンをニヤリとさせるものでしょうし、１９世紀の人物と思われていたホームズですが、映画の時代は１９４７年、と言うのも意外でした。
老いた頭脳を復活させる秘薬として、日本産の山椒の一種が登場し、それを求めてホームズが赴いたのが広島で……と言うのは、微妙に３．１１後の日本を意識しているのかな、と思ったりもしました。
しかし、それら魅力的な設定や小道具が、上手く噛み合ってない感があるのがもどかしく、また、シャーロキアンにとって、いかに名優、イアン・マッケランが演じるとは言え、老いさらばえ、自慢の記憶力も洞察力も衰えたホームズの姿を見たくはないのではないか、と思ってしまいました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
ビル・コンドン
■出演
シャーロック・ホームズ ・・・ イアン・マッケラン
ロジャー ・・・ マイロ・パーカー
（その他のキャスト）
ローラ・リニー 真田広之, ハティ・モラハン パトリック・ケネディ ニコラス・ロウ ロジャー・アラム
フィル・デイヴィス フランシス・デ・ラ・トゥーア ジョン・セッションズ タカコ・アカシ
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私には、やり残したことがある。
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