| 家族はつらいよ |
これは、山田洋次監督によるコメディ。
タイトルからも連想されるように、監督の代表作「男はつらいよ」のような、大家族の引き起こす小さな大騒動で、笑わせつつも最後には心温まる、ホームドラマのお手本のような映画です。
東京近郊のニュータウンに暮らす平田家は最近珍しい三世代同居の大家族。
仕事を引退し悠々自適の隠居生活を送る周造と妻の富子に、長男夫婦と腕白盛りの孫の男の子がふたり。長女は結婚して家を出たけれど、未だ独身の次男坊も同居中だ。
ある日、妻の富子の誕生日だと言うのにゴルフを楽しんでいた周造は、富子から誕生日プレゼントに離婚届けに判子を欲しいと告げられショックを受ける。それを知った長男の嫁の史枝は、家族会議を開くことにするが……
この映画、どうにも既視感があると思ったら、この家族のキャスティングは２０１２年の「東京家族」と同じ。
ただ、小津安二郎の「東京物語」をなぞったような「東京家族」が、いささか堅苦しい雰囲気をまとっていたのに対し、この「家族はつらいよ」は、山田洋次監督、十八番のホームドラマ。正に「水を得た魚」とはこの事か、と言う感じで、俳優も活き活きと演じているように思えました――ただ、蒼井優だけは自分が原節子の位置付けにある事を意識してか、いささか固いのですが、それは仕方ない所でしょうか。
物語も演出にも破綻無く、個性豊かな登場人物の掛け合いも楽しく、俳優も様々に工夫を凝らして画面の端にいてもあれこれ芸を盛り込んでいるので目が離せません。
また、タイトルからしてそうなのですが、「男はつらいよ」を始め、過去の山田作品をあれこれ引用しているのも要注意ですし、ラストで「東京物語」を引用しているのは、これが山田洋次が作り直したかった「東京家族」と言う意志表示なのではないか、と思いました。
あれこれと口やかましく、自分勝手に好き放題やっているように見えて、いざと言う時にはそれなりにまとまる、家族ってそんなものだよな、と割り切りながらも、自由気ままな、あの寅さんだって、何時だって帰りたくなる“家”と言うものの素晴らしさをあっけらかんと謳い上げる、これぞ正にホームドラマの王道。
山田洋次監督の手腕と、芸達者なこのキャストの組み合わせならば、これなら幾らでも物語を作れそう。
これは「寅さん」同様、シリーズ化もあるのではないでしょうか？
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
山田洋次
■出演
平田周造 ・・・ 橋爪功
平田富子 ・・・ 吉行和子
平田幸之助 ・・・ 西村雅彦
平田史枝 ・・・ 夏川結衣
金井泰蔵 ・・・ 林家正蔵
金井成子 ・・・ 中嶋朋子
平田庄太 ・・・ 妻夫木聡
間宮憲子 ・・・ 蒼井優
（その他のキャスト）
岡本富士太 広岡由里子 近藤公園 北山雅康 徳永ゆうき 関時男
小林稔侍 風吹ジュン 中村鷹之資 丸山歩夢 笹野高史 木場勝己
笑福亭鶴瓶
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妻よ、笑顔を下さい。夫よ、離婚を下さい。
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