ザ・ブリザード
これは１９５２年に海難事故に遭ったＳＳペンドルトン号の救出劇を「ミリオンダラー・アーム」のクレイグ・ギレスビー監督が映画化したもの。
１９５２年２月。ニューイングランド沖で大嵐に襲われたタンカー、ＳＳペンドルトン号は大波で船体を引き裂かれてしまう。
船長らを乗せた前半部は沈没し、後部船体の機関室に残された船員たちは必死に沈没を食い止めようとするが、浸水は増加し、船橋を失った船からはＳＯＳを発信する事も出来ない。
その頃、漂流するタンカーの目撃情報を得た沿岸警備隊のバーニーら４人の若手隊員らは、救助艇での出動を命じられた。
だが、彼らは大嵐の中で砂州の切れ目を見極めて突破し、定員１２名の小型救助艇で３２名の生存者を休出しなければならないのだ……
最新の３Ｄ映像で大嵐の海に観客を放り込む本作、その映像は大迫力ですし、様々な人間ドラマにロマンスまでも盛り込んで内容は盛り沢山。
いかにもディズニーらしく、真面目に、丁寧に作られた映画で、エンドロールに流れる記録写真を見ると、モデルとなった人物に似た俳優を起用しているのが見て取れます。（ヒロインのミリアム役に抜擢された女優の選択に正直「？」だったのですが、エンドロールを見て納得）
映画の見所としては救助艇を翻弄する大嵐となりますし、物語上も主人公バーニーが乗る救助艇が中心にはなりますが、ひたすら大波との格闘が続く１本調子。見せ場の砂州乗り越えはひとつのサスペンスにはなっていますが、コンパスを失った救助艇がＳＳペンドルトン号を発見するのも偶然ですし、定員１２名の救助艇で３２名を救うのもただ詰め込むだけ、と見せ方に工夫がありません。
むしろ、ドラマとして面白いのはＳＳペントルドン号のエピソードで、機関士のシーバートを中心に救難ボートで脱出しようと言う反対意見を封じ込め、船橋と共に操舵機を失った船の舵を人力で切って、暗礁に乗り上げて沈没までの時間を稼ぐ、と言う知恵と団結で危機を乗り切るサスペンスとしてはこちらの方が見せます。
確かに、船内の描写が大半なので、映像的な見せ場としては弱いのが難点ですが……そうした映像としての「見せ場」とお話としての「面白さ」がちぐはぐなのはちょっと勿体ない。
また、優等生のディズニー映画らしく、女性も活躍させるべくバーニーの恋人をヒロインとして描くのですが、女性がまだまだ抑圧された１９５０年代と言う事もあり（確かに漁師町の女だけに、気は強くて言う事は言うにせよ）、思うように動けないで終わるのも不完全燃焼気味。
この映画、むしろＳＳペントルドン号の船内のエピソードをを中心に据え、もっと男臭く・油臭く描いた方が面白くなったのではないでしょうか？
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
クレイグ・ギレスピー
■出演
バーニー・ウェバー ・・・ クリス・パイン
レイモンド・シーバート ・・・ ケイシー・アフレック
ミリアム ・・・ ホリデー・グレインジャー
（その他のキャスト）
ベン・フォスター エリック・バナ ジョン・オーティス カイル・ガルナー ジョン・マガロ
グレアム・マクタヴィッシュ マイケル・レイモンド=ジェイムズ ボー・ナップ ジョシュ・スチュワート
エイブラハム・ベンルービ キーナン・ロンズデイル レイチェル・ブロズナハン
■コピー
生存者３２人。救助艇の定員１２人。
希望までは、凍てつかせない
■Ｌｉｎｋ
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