ドラゴン・ブレイド
これは、ジャッキー・チェンが製作・主演し、紀元前の中央アジアで東進したローマ軍が前漢と衝突したと言う史実を脚色して作られた歴史スペクタクル。
製作費は８０億円。中国語映画最高額と言う巨費を投じて作られた大作です。
紀元前５０年。前漢の時代の中国西域には３６もの民族が暮らし、時として衝突していた。西域は西洋と東洋を結ぶ重要な通商路であり、漢はこの地域の押さえとして西域警備隊を配置していた。
西域警備隊の隊長フォ・アンは、身に覚えのない罪の責により、西の辺境の砦に流刑となる。そこにやって来たのが、将軍ルシウスに率いられた、疲弊したローマの軍勢。国境守備隊と一触即発の事態となったが、フォ・アン隊長の機転により、ルシウスの軍勢との衝突は回避され、兵士らは砦で身を休める事となった。
ルシウスは執政官クラッススに仕えていた名将だ。だが、執政官の長男ティベリウスが権力簒奪のため父を殺し弟のプブリウスを失明させた事から、ルシウスはプブリウスを連れて逃亡したのだった。
だが、その時、既にルシウスを追うティベリウスの大軍が西域に迫りつつあった……
この映画、これだけの大作でありながら上映時間１０３分しかありません。実は、これはインターナショナル版で、オリジナルは１２７分あるそうですが……これはさすがに切り過ぎでしょう。特に中盤以降（例えば、フォがかつての部下に援軍を求めに行き、そこで裏切りの襲撃に遭うシーンなど）、物語が繋がらずに「あれ？」となるシーンが幾度もありました。
最近では２時間越えの映画など珍しくないのですから、オリジナルバージョンで上映して欲しかったものです。
この映画でのジャッキーは、主演とアクション監督と言う事もあり、映画の内容的にもジャッキー映画の色合いは薄まっていますが、さすがにそのアクションは健在。全盛時には及ばないとは言え、まだまだ身体も動きますし、ゴム紐で繋がれた剣を投げて、再度受け止めると言うアイデアのアクションを盛り込むなど、あれこれ工夫している感があるのも面白いです。
また、歌声を披露するシーンもあり、見せ場は充分以上に作られています。
民族を越えた男の友情とそれを壊す男の愛憎と言うドラマはなかなか見せますし、ジョン・キューザックに、エイドリアン・ブロディと言うアクションが得意でなさそうな俳優を巧みに使い、思わぬ表情と演技を引き出しているのも見所でしょう。
ただ、この映画でちょっと気になったのは結構露骨な政治色。
中国は国家内に多くの少数民族を抱え、近年、問題となっているのはウイグル族……正に、この映画の舞台、この映画に描かれる“少数民族”のひとつ。そんな少数民族が力を合わせ、外敵を打ち砕く、と言う映画の描写の狙いは、さすがに見え見え。
また、あのローマ帝国が、中国皇帝の許しを得てシルクロードに拠点を築く……と言う辺りに中華思想に加え、経済で世界をリードしようとする中国の野心が透けて見えるような……
「化敵共存」と言うスローガンを最後に出す辺りも、その“裏”を考えてしまいます。
（２０１６年 ２月１７日 ＴＯＨＯシネマズ上大岡にて）
（作品データ）
■監督・脚本
ダニエル・リー
■出演
フォ・アン ・・・ ジャッキー・チェン
ルシウス ・・・ ジョン・キューザック
ティベリウス ・・・ エイドリアン・ブロディ
（その他のキャスト）
チェ・シウォン リン・ポン シャオ・ヤン ワン・タイリー ミカ・ウォン ジョゼフ・リュウ・ウェイト
ロリ・ペステ ユ・スンジュン ウィリアム・フォン サミー・ハン ヴァネス・ウー カリーナ・ラム
シャーニ・ヴィンソン
■コピー
遥か遠い昔、シルクロードで…。
平和のために戦った勇者たちがいた。
■Ｌｉｎｋ
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