これは、ジャニーズのアイドルユニット「ＮＥＷＳ」の加藤シゲアキの原作を、やはりジャニーズの「Ｈｅｙ！Ｓａｙ！ＪＵＭＰ」の中島裕翔が主演して映画化したもの。
　ここまでの情報だと、ジャニーズのアイドル映画と思えるかもしれませんが、なかなかどうして、これは映画ファンをも唸らせる見応えのある映画となっていました。

　渋谷の高級マンションの一室で、若手人気俳優・白木蓮吾が自殺した。遺体の第一発見者は幼馴染みの河田大貴。警察での取り調べを終えて報道陣に取り囲まれる大貴を、彼と同じく蓮吾の幼馴染みだった沙理が見つめていた――
　３人の物語の始まりは、その１４年前。関西から埼玉に引っ越してきた大貴が、同じ団地に住む真吾と沙理と出会った時からだった。
　高校生の時、信吾と大貴は、雑誌の読者モデルにスカウトされたのをきっかけに芸能界に入る。
　だが、俳優としての才覚を見せた真吾が新進俳優・白木蓮吾としてスターダムを駆け上がる一方で、鳴かず飛ばずの大貴は自分自身の才能のなさに焦り、いつしか真吾を憎み始めて……

　映画は、白木蓮吾の死に始まり、３人の出会いに戻って、そこから１４年に渡る３人の時間を描く構成。
　長い時間を描くのにこうしたマズルカ方式は定番であり、これで蓮吾の死の謎解きをするんだな、と予測しながら見ていて「あれ、テンポが早くないか？」と思い始めた１時間ほどで、この映画はいきなりドラマをひっくり返します。
　映画宣伝コピーにも「６２分後の衝撃」とありますが、これはさすがにインパクトがありました。
　映画慣れしている自分でも呆気にとられたのですから、映画を見慣れない人がこれでついて行けなくなる事もあるのは仕方のない事でしょう。
　（原作は未読なのですが、大まかな流れは原作と概ね同じのようです）
　これに関してはネタバレになるので細かくは書きませんが、映画前半部分を観ていて感じた信吾と大貴を演じる俳優に対する違和感、それを生み出したキャスティングは、巧み（と言うか辛辣）なもので、この辺りはさすが、行定勲と言う所でしょうか。

　中島裕翔はさすがジャニーズと言う感じの女子ウケのよさそうなルックスですが演技はちょっと……でも、前述したようにその辺りを巧みに取り入れたキャスティングには納得。中盤以降、悪魔のような存在感を見せる菅田将暉もよかったのですが、これまでやって来た“純朴少女”から、全く正反対の表情を見せる夏帆の振り幅の大きさも見所でしょう。

　“ちゃぶ台返し”の後、種明かしのような後半パートにちょっと失速したような感じがあったのは惜しい所ですが、最後の最後に浮かび上がる、たとえ親友と言えども他人を理解する事は難しい、とテーマも含め、これは決して「アイドル映画」の枠に収まらない、痛くて苦い青春映画となっていました。
　

　（２０１６年　１月１８日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

行定勲　

　■出演

中島裕翔　　菅田将暉　　夏帆　　岸井ゆきの　　小林涼子　　千葉哲也
マキタスポーツ　　篠原ゆき子　　矢柴俊博　　入江甚儀　　橋本じゅん
松永玲子　　白石和彌　　三浦誠己　　岡本あずさ　　伊藤さとり　　宮崎美子
柳楽優弥　　加藤シゲアキ　　行定勲

　■コピー

夢のような現実と、現実のような夢のはざまで 君は突然、逝ってしまった――。　

　■Ｌｉｎｋ

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