| クロスロード |
これは、日本のＯＤＡの一環として活動している青年海外協力隊の設立５０周年を記念して製作された映画。
主演はＥＸＩＬＥの黒木啓司に、渡辺大。ヒロインは「ウルヴァリン：ＳＡＭＵＲＡＩ」に出演したモデル出身のＴＡＯ、となかなか豪華なキャスティングです。
カメラマンの沢田は、東北の被災地の取材で、かつて青年海外協力隊で同期だった羽村と会う事となった。
１０年以上前、将来を悩んでいた沢田が飛び込んだのが青年海外協力隊だった。
「ボランティアなど偽善だ」と公言し、派遣先の海外で自分だけの被写体を見つけてカメラマンとして一旗揚げたい、と言う身勝手な志望理由の沢田だったが、何故か隊員として採用されたのだ。
そんな沢田は、生真面目にボランティアに取り組む羽村と事ある度に衝突した。
そして、沢田と羽村は派遣先のフィリピンでも衝突を繰り返すのだったが……
この映画は一般公募で大賞に選ばれた佐藤あい子のオリジナル脚本を、実際に青年海外協力隊としてモロッコに派遣された経験もあると言う、すずきじゅんいち監督が映画化したもの。
物語としては、ふたりの主人公が、ぶつかり合い、悩み、最後にはお互いを認める青春ドラマ。
そして、青年海外協力隊の立場から主張して欲しい筈の“ボランティアによる国際貢献”を前面に出さず、「ボランティアを偽善」と言う男が主人公で、派遣先で成果を上げられず、もどかしい思いを抱えて帰国する様を描くなどした辺りも挑戦的。発展途上国支援が、決して綺麗事だけでは済まされない現実を匂わせる内容には好感が持てましたし、勿論、ボランティアの根底にある「人の為に動く」と言う、人の良心を肯定する辺りは映画の後味を爽やかなものとしています。
それに、すずき監督の経験もあるのでしょうけれど、青年海外協力隊の仕組みや、訓練の様子、派遣先での活動などを手際よく盛り込まれて、“お仕事紹介”系の映画としても興味深く観られました。
ただ、描き込まれた沢田の人物像とドラマに対し、商社マンだった羽村がボランティアに没頭する理由が明確でないなど描写のバランスが悪いのは気になりましたし、終盤の展開は甘口で、さすがに出来過ぎではないでしょうか？
そして、ふたりの衝突と和解に至るドラマが余りに青臭くて子供っぽく、これではまるで「中学生日記」ではないか、と思ってしまいました。
（２０１５年 １１月２８日 横浜ブルク１３にて）
（作品データ）
■監督
すずきじゅんいち
■出演
沢田樹 ・・・ 黒木啓司
羽村和也 ・・・ 渡辺大
野村志穂 ・・・ ＴＡＯ
（その他のキャスト）
アローディア 長塚京三 榊原るみ 山本未来 加藤雅也 飯伏幸太
■コピー
ボランティアなんて偽善だ
■Ｌｉｎｋ
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