ラスト ナイツ
LAST KNICHTS
これは、「ＣＡＳＳＨＥＲＮ」、「ＧＯＥＭＯＮ」の紀里谷和明の新作で、ハリウッドデビュー作。
主演のクライヴ・オーウェンはイギリス人、共演者は日本から伊原剛志、アメリカからモーガン・フリーマン、韓国からアン・ソンギ、ニュージランドからクリフ・カーティスと多国籍化しており、映画製作もチェコと韓国によって行われたのだとか。
物語の舞台となるのは中世的な封建国家。誇り高い騎士が活躍した戦乱の時代が終わり、平和が訪れた国には腐敗が忍び寄っていた。
高名な騎士団を配下に置く領主バルトーク卿は、帝国の実権を握る大臣ギザ・モットからの賄賂要求を拒絶したことで斬首刑に処せられた。しかも、ギザ・モットの進言により刑はバルトーク家の騎士団長・ライデンによって執行されたのだ。
バルトーク家は取りつぶされ、所領は没収。ライデンに率いられた騎士団も解体され、故郷を離れることとなる。
ギザ・モットは復讐を恐れて居城の守りを固めると共に、身辺警護の騎士イトーにライデンの監視を命じる。だがライデンは主を手にかけた自責の念から腑抜けのようになり、酒色に溺れる無為な日々を過ごしていた……
ここまでのストーリーで日本人ならピンと来ます、これは「忠臣蔵」なのだ、と。
ハリウッド版忠臣蔵と言うと、キアヌ・リーヴスの「４７ＲＯＮＩＮ」が記憶に新しいですが、大胆に脚色されたファンタジーものとなっていた「４７ＲＯＮＩＮ」に対し、こちらは日本人の紀里谷和明がメガホンをとるだけに、物語は意外なほど忠実に「忠臣蔵」を踏襲。物語だけでなく、設定や場面設定にもオリジナルが活かされて、そのアレンジに唸らされる部分もあります。
中世ヨーロッパ風でありながら、人種混在ぶりや宗教観の希薄さなど、舞台設定はほぼオリジナル。それでも、怪物や妖精も登場せず、魔術の類いも登場しない現実的な世界を構築しており、ドラマもまたリアルタッチ。
これまでの紀里谷和明映画に見られた個性的な映像表現は目立たず、彩度を抑えたモノトーンに近い映像と合わせ、いささが地味な印象を与える仕上がりとなっていますが……やはり、ハリウッド進出第一弾、と言う事で、自制した、と言う所でしょうか？
（あのクリストファー・ノーランでさえハリウッドデビュー作は地味な映画でしたからね）
そうした中でも、センスの一端を見せて作品をまとめたのにはまずは合格点がつけられるでしょうが……ただ、もう少し“らしさ”があってもよかったんじゃないかなぁ、と思ってしまいました。
クライマックスの“討ち入り”は、アクションだけでなく、鉄壁の防御を入念な計画によって崩していく面白さもあって、なかなか見せますが、望むならばここはそれまで押さえていたものが爆発するエモーションが欲しかった。「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」、その上で怒りを爆発させるのは、日本映画のお家芸でもあり、それをハリウッドでも見せて欲しかったと思います。
（２０１５年 １１月１７日 横浜ブルク１３にて）
（作品データ）
■監督
紀里谷和明
■出演
ライデン ・・・ クライヴ・オーウェン
バルトーク卿 ・・・ モーガン・フリーマン
ギザ・モット ・・・ アクセル・へニー
イト− ・・・ 伊原剛志
（その他のキャスト）
ショーレ・アグダシュルー アン・ソンギ ジェイムズ・バブソン パヴェル・ベズデク ダン・ブラウン
ジョルジョ・カプート ブライアン・カスペ ローズ・ケイトン クリフ・カーティス ナイジェル・ゴア
ピーター・ホスキング リー・イングルビー デイヴ・レジェノ ペイマン・モアディ パク・シヨン
アイェレット・ゾラー
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