探検隊の栄光
これは、荒木源による同題小説を「グッモーエビアン！」の山本透監督が映画化したもの。
落ち目の熱血派俳優、杉崎が受けたのはＴＶ番組の仕事。伝説の大蛇、“ヤーガ”を求めジャングルの奥深くにある人跡未踏の洞窟を探検する、と言う番組だ。
面白ければ何でもアリのプロデューサーに、大雑把なディレクター、無口な職人気質のカメラマンにオタクの音声と、彼らスタッフをバカにしている紅一点のＡＤと言う探検隊スタッフは、怪しげな現地ガイドに案内されてジャングルに踏み込んでいく。
慣れぬドキュメンタリー番組に戸惑いながらも、杉崎の中に次第に探検隊をまとめる隊長の自覚が生まれて行き……
この映画が描く“日曜スペシャル「杉崎探検隊」”は、勿論、あの“水曜スペシャル「川口弘探検隊」”のパロディ。
「川口弘探検隊」シリーズは、その本放送当時から、その“ヤラセ”と思わせぶりな空騒ぎが、様々なパロディや揶揄の対象となっていただけに、それを題材に、その番組作りをネタに作品にしてしまおう、と言う狙いは判ります。
ただ、放送終了から既に３０年近くを経過し、「探検隊」と言う言葉でピンと来る人がどれほどいるものか……映画企画自体、タイムリーではないような気がします。
物語としては「川口弘探検隊」を茶化すばかりではなく、その根底に流れる精神に敬意を払うもので、そこは好印象を持てる所。
ただ、映画としては……物語内で熱く語られる「観てくれる人に面白がって貰う為に常に本気」と言う姿勢を体現しているのが、ひたすらに熱く演じる藤原竜也のみ、と言うのがいただけません。
あまりにチープなセット、熱帯と言いながら吐く息がはっきりと白く、日本国内で撮影しているのが見え見えのロケ……「探検隊」のチープさ、そしてヤラセとコジツケを、この映画までも踏襲してどうするのか。セット撮影は仕方ありませんが、せめて屋外シーンは実際に海外ロケで撮影して欲しかった所です。
ロケ現地の反政府活動と、その終結の扱いも腑に落ちないものですし、クライマックスもちょっと引っ張りすぎでぐだぐだな感じになってしまったのも気になります。
あと、紅一点で、折角、人気グラドルの佐野ひなこを起用しているんですから、ここはサービスカットを奢るべきではないでしょうか？（パンチラ１回のみ、と言うのでは……）
元ネタ知ってる人限定となる内容は観客を選びそう（事実、自分の観た回、観客は２人でした）ですが、ノリとテンポはよく、尺も短くて気楽に楽しめる映画にはなっています。
それだけに、映画ももう少し「本気」で作って欲しかったものですが……
（２０１５年 １０月２０日 横浜ブルク１３にて）
（作品データ）
■監督
山本透
■出演
杉崎正雄 ・・・ 藤原竜也
伊坂善三（プロデューサー） ・・・ ユースケ・サンタマリア
瀬川学（ディレクター） ・・・ 小澤征悦
橋本政明（カメラマン） ・・・ 田中要次
小宮山秀一（音声・照明） ・・・ 川村陽介
赤田たまき（ＡＤ） ・・・ 佐野ひなこ
マゼラン（現地ガイド） ・・・ 岡安章介
（その他のキャスト）
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