ファンタスティック・フォー
これは、マーベル・コミックス「ファンタスティック・フォー」の実写映画化作品。
マーベル・コミックスの中でも最も長く続くシリーズながら、人気の「アベンジャーズ」世界の作品群とは映画化権を有する会社が異なる（実は「スパイダーマン」シリーズもそう）せいか、これまであまりパッとしなかった「ファンタスティック・フォー」。
２００５年から始まったシリーズも２作で消滅してしまったのですが、今回、「クロニクル」のジョシュ・トランク監督によりリブートされる事になりました。
主役となるリード役には、「セッション」の熱演が注目された若手のマイルズ・テラーを起用、その他キャストも若く、まるで青春映画のようなキャスティングです。
天才少年リードは、物質転送装置の製作に熱中していたが、家族も学校でもまるで相手にされないでいた。そんなリードを支えるのは親友のベン、ただひとり。
やがて高校生になったリードはベンと共に科学コンクールで漸く完成した物質転送装置を披露するが、審査員には認められずに終わった。
失意に沈むリードに声をかけたのは、バクスター財団のストーム博士。そして、スカウトされて財団の研究員となったリードは、博士の息子ジョニー、養女スー、研究者ビクターと共に、人間を転送する事の出来る大型転送装置の完成を目指すが……
この映画、マーベル・コミックスの世界観を青春映画のフォーマットで描こうとするもの。
確かに、何でもない若者が成長し、自分の居場所を見つけると言う青春映画は、力を得てスーパーヒーローになる、と言うヒーローものの第一話に相応しい、と思えますし、その着眼点は悪くなかったと思います。
（事実、別の製作会社ですが「スパイダーマン」は、スーパーヒーロー＋青春映画が上手く行った例でしょう）
しかし、この映画のジョシュ・トランク監督、前作「クロニクル」の冴えが見られず、何ともすっきりしないのです。
青年の成長と、力には責任が伴う、と言う教訓と実感、そして恋愛のバランスがよかった「スパイダーマン」に対し、この映画、主人公リードと、親友ベンとの絆や、彼らと家族の関わり合いのドラマが描き込まれておらず、どうにもドラマが薄味。また、紅一点のスーにロマンスを絡められなかったのも勿体ないように思います。
その一方で、アクションシーンは削られ、薄暗いラボに籠もっての作業や、これまた暗い異次元世界探索と、地味な場面が多く、派手な見せ場を作れていないのも難点でしょう。
まぁ、こうした内容、最近流行の“シリーズ：０”ならばありでしょうが、観客を引きつけるインパクトの欲しいシリーズ第一作としては疑問の残るものです。
キャストの方も、マイルズ・テラーは「セッション」の時とは別人のような感じでどうにもしゃきっとせず、また、演技巧者のジェイミー・ベルが“ザ・シング”とは如何なものかと思います。
ただ、くりっとした瞳が印象的なケイト・マーラはキュートでしたけど。
先行して公開された米国では、評価も得られず興行的にも不発だったそうですが、それも仕方ないか、と思える出来映え。
今回もまたぱっとせず、今後のシリーズ化も難しそうな感じです。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
ジョシュ・トランク
■出演
リード・リチャーズ／Ｍｒ．ファンタスティック ・・・ マイルズ・テラー
スー・ストーム ／インビジブル・ウーマン ・・・ ケイト・マーラ
ベン・グリム ／ ザ・シング ・・・ ジェイミー・ベル
ジョニー・ストーム／ヒューマン・トーチ ・・・ マイケル・B・ジョーダン
ビクター・フォン・ドゥーム ・・・ トビー・ケベル
ストーム博士 ・・・ レグ・Ｅ・キャシー
（その他のキャスト）
ティム・ブレイク・ネルソン
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