チャンス商会
〜初恋を探して〜
これは、「シュリ」や「ブラザーフッド」のカン・ジェギュ監督が描く感動的で残酷なラブストーリー。
２００８年のアメリカ映画「優しい嘘と贈り物」をリメイクしたもののようです。
ソウルの下町で一人暮らしをしているキム・ソンチルは７０歳。とは言え、元海兵隊員のソンチルはまだまだ元気で、未だ近所の老舗スーパー「チャンスマート」で働いていた。
頑固で怒りっぽく、偏屈なソンチルは、地域の再開発計画にひとり反対をし続け、まとめ役になっているスーパーのチャンス社長を悩ませていた。
だがある日、目の前の家に引っ越してきた同世代の女性グンニムに、ソンチルは心を奪われる。花屋を営むグンニムは、一人暮らしのソンチルを心配して、何かと世話を焼いてくれる。
「ソンチルが恋をして幸せになれば契約書に判を押してくれるかも」と期待した町の人たちは、彼の恋を応援するのだが……
この物語、ある秘密があり、それが最後に明らかにされる、と言うドンデン返しのある構成となっています。そうして明らかになった“真実”が感動と涙を呼ぶ仕掛けとなっています。このアイデアは確かに優れもので、描かれるドラマはいかにも韓国映画らしく熱い感動を生むと共に、“真実”の残酷さでもって観客の胸を突くのです。
映画序盤は、ソンチルの不器用ながら真剣に恋する様子を描き、老人の最後の恋物語と思わせます。
そんなソンチルの恋を、周りの人々は再開発同意の為に後押しする、と言う理由で後押しするのですが、これが利己的な部分が目立って嫌らしくならないよう、韓国映画お得意の賑やかしいドタバタギャグを盛り込みながら軽妙に描き、ドラマの盛り上がりと共にソンチルと家族の物語に絞って、感動のドラマとして行く辺りの展開も、これまた韓国映画のお家芸とは言え上手いもの。
勿論、ドラマの主眼は、あくまでソンチルの生涯の恋と家族の物語であり、ドンデン返しによるショックではありません。
映画最初から、秘密を解く鍵と、仕掛けが散りばめられているため、秘密が明かされる場面の前に概ね予測はついてしまい、ドンデン返しのショックと言うよりも、ジグソーパズルの絵が組み上がるように、散りばめられたピースが揃って予想していた絵になる、と言う、ある種「腑に落ちる」気持ちよさがあります。
また、そうなると、それまで映画内で描かれた様々な仕掛けを確認したくもなり、これは“あなたは必ず２回観る”と言うコピーの「イニシエーション・ラブ」より、もう一度観たい、と思わせる度は強いと思いました。
そうして描かれる物語は、ソンチルの生涯をかけた恋と、永遠を誓った愛を奪い去る病の残酷さ。
人生最後の恋を描くラブストーリーに難病もの、それに家族愛をも持ち込んだ盛り沢山の内容は、正に韓国映画らしいものでしょう。
これまでアクションものを得意とする監督、と言うイメージがあったカン・ジェギュですが、こんな映画も作るんだなぁ、と言う意外さもありました。
（２０１５年 ９月３０日 ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
カン・ジェギュ
■出演
ソンチル ・・・ パク・クニョン
グンニム ・・・ ユン・ヨジョン
（その他のキャスト）
チョ・ジヌン ハン・ジミン ムン・ガヨン チャンヨル
■コピー
優しい嘘と切ない秘密を知ったとき、最もピュアな涙が零れ落ちる。
■Ｌｉｎｋ
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