赤い玉、
これは、高橋伴明監督が、老齢にさしかかった映画監督を主人公に、“老い”と葛藤する男の生き様をエロティックに描く映画です。
映画監督の時田修次は、もう何年も映画を撮っていない。京都の大学で映画作りを教えながら、愛人の大学事務員・大場唯の部屋に入り浸っている。
そんな時田だが、映画会社の提示する企画にそっぽを向き、自身、最後の映画と決めているシナリオを書き進めていた。
ある日、時田は本屋で印象的な女子高生に出会って彼女をつけ回すようになる。一流私立校に通う彼女は、深窓の令嬢のようでありながら、放課後はダンススタジオで扇情的な衣服で官能的なダンスを踊るのだった。
彼女に深くのめり込んで行くうちに、映画シナリオと現実とが交錯して行き……
この映画の主人公、奥田瑛二が演じる時田は高橋監督が元になっているのは確実でしょう。高橋監督は京都造形芸術大学の映画学科長を勤めており（この映画は同大学で撮影されている）、年齢的にも奥田瑛二と同世代。時田の妻を演じているのは高橋監督の夫人である高橋惠子なのですから……
ただし、高橋監督自身は、それを否定していますが、なにせ「映画屋はウソをつくのが商売」と作品中でも繰り返し言っていますからね……
映画中には、時田が教鞭をとる大学での学生による映画撮影シーンも描かれますが、これらを含め、この映画の撮影スタッフも学生が務めていますし、出演者も村上由規乃や花岡翔太らは、京都造形芸術大学の学生や卒業生と言う事で、この映画、「映画を作る映画」にはありがちな事ですが、メタフィクションな構造を持っています。
映画タイトルになっている“赤い玉”とは、男の“最後の射精”にまつわる伝説に由来するもの。
つまり、「いつまで“男”でいられるのか？」と言う事で、映画は、この“男”と“映画監督”を重ね合わせて描いて行きます。
映画の中で、時田が書く映画シナリオは正にこの「赤い玉、」で、映画の中で繰り広げられるのは、どこまでがシナリオでどこまでが現実なのか……信じられないようなタチの悪い現実と、リアルな夢とを交錯させる物語は、観客に、今、観ているものは何なのかを問う、挑発的なものです。
低予算の映画で、ギャラも奥田瑛二の相場の１／１０以下だったそうで、主要キャストに知名度の高い俳優はいません。（柄本佑は例外だけど、彼は奥田瑛二の義理の息子なので引っ張り込んだ可能性大）
唯役の不二子は、中年男のセフレとしていい存在感を出していましたが……映画的には望み得るならば壇蜜の出演を願いたかった所。（歳も変わりませんし）
本作のファムファタールの女子高生を演じた村上由規乃は、太めで肉感的。セーラー服姿の清楚さに対して、その肉体を見せた時の印象の差異の大きさと、濃厚な色気に圧倒されました――やはり、年取ると胸より尻に嗜好が偏るなぁ……
エロティック内容で、執拗な性愛描写もあるので観る人を選ぶとは思いますが、重層的な構造に、男の生き様を問う内容と、インパクトのある映画でした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督・脚本
高橋伴明
■出演
時田修司 ・・・ 奥田瑛二
大場唯 ・・・ 不二子
北小路律子 ・・・ 村上由規乃
（その他のキャスト）
花岡翔太 土居志央梨 山田奈保 上川周作 福田あさひ 吉井優
林諒一 水上竜士 柄本佑 高橋惠子
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みだらに狂ってこそ、映画
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