クーデター
これは、オーウェン・ウィルソン主演のサバイバル・アクション。
水道会社のジャック・ドワイヤーは、受注した水道事業の責任者として妻子と共に東南アジア某国へやって来た。
しかし、会社が手配したはずの迎えの車は空港に現れず、飛行機内で出会った英国人ハモンドに助けられ辿り着いたホテルでは、電話が通じずテレビも映らない。慣れない国で不安を募らせる一夜を過ごした翌朝、ジャックは突然発生したクーデターに巻き込まれる。暴徒と化した市民は“外国人狩り”で白人たちを手当たり次第に殺害。言葉も通じない異国の地で、ジャック一家はどこへ逃げればいいのか――
映画はタイで撮影されていますが、舞台としてはベトナムの隣国の架空の国、と言う事で国名も明かされません。物語として重要なのはある国で起き得るシミュレーションではなく、アジア人の中で、現地の言葉を話せない白人が取り残される、と言う状況なのでしょう。
確かに、言葉の通じない異国、しかも異人種の中にひとりいると言うのは、それだけでもかなりのプレッシャーになりますし、この映画が描くのは、見つかったら殺される、と言う極限のスリルです。
映画は、冒頭でクーデターの発端となる事件を描き、時間軸を少し戻して現地に向かうジャックら一家の様子を描いて、あとは時系列順に描いて行きます。
ホテルに到着した翌朝から緊張が高まり、クーデターが起きてからは一気呵成、緊張感を殆ど弛める事なく、最後まで突っ走ります。
映画として低予算のＢ級ですし、描写にも多少の行き過ぎや辻褄が合わな点が出て来るのですが、怒濤の展開に見ているうちは殆ど気になりません。先の読めない展開にサスペンスフルな描写に、ドキドキが最後まで収まらない感じで、この辺り、ジョン・エリック・ドゥードル監督、並みではないセンスを感じさせます。
面白かったのは謎の英国人、ハモンドを演じたピアース・ブロスナン。彼は実は英国の工作員で……要するに、それって彼がかつて演じた「００７」の同業者、と言うこと。まぁ、確かに熱帯の東南アジアは、スーツ姿のジェームズ・ボンドよりも、アロハのハモンドの方がリアルだよな……と思わされますし､彼が説明するクーデターの理由もまたそれらしい。クーデターを起こす方にも然るべき理由があり、その原因はジャックら先進国の人間にあるのです。ジャックが駆け込もうとした頼りの米大使館は爆破されてしまい、家族を最後に救うのがベトナム、と言う辺りも含め、スリルとサスペンスだけでない、“毒”を含ませた内容にも感心します。
オーウェン・ウィルソンは、かつて「エネミー・ライン」と言う異国で逃げ惑う映画に主演していますが、本作は小品ながらサスペンスフルな事にかけては引けを取るものではありません。
手に汗握るスリルとサスペンスの連続に、鑑賞後は疲労感さえ覚えた映画でした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
ジョン・エリック・ドゥードル
■出演
ジャック・ドワイヤー ・・・ オーウェン・ウィルソン
アニー・ドワイヤー ・・・ レイク・ベル
ハモンド ・・・ ピアース・ブロスナン
（その他のキャスト）
スターリング・ジェリンズ クレア・ギア スペンサー・ギャレット サハジャック・ブーンタナキット
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敵は全国民。愛するものを守り、生き残れるか？
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