これは、テロリストに襲われ山中に孤立した米大統領と、彼を手助けする少年ハンターの活躍を描くアクション映画。
　予備知識なく、漠然とアメリカ映画だろう、と思って観始めたのですが、これはフィンランド映画でした。

　フィンランドの猟師の息子、オスカリは１３歳の誕生日に成人の儀式の為に山に入った。猟師の子は、この山で獲物を仕留め、一人前の猟師となるしきたりだ。
　その夜、森に轟音と共に何かが落ちて来た。
　恐る恐る近づいたオスカリの前に現れたのは、米国大統領のムーアだった。テロリストにより専用機“エアフォース・ワン”を撃破され、命からがら脱出したのだった。
　だが、その時、地上からもムーア大統領を捕らえようとテロリストたちが迫っていた。オスカリの助けを借り、ムーア大統領はこの局面から脱出しようとするのだが……　

　この映画、物語の設定から知略ある大統領が森を知り尽くした少年ハンターとコンビを組んでテロリストと戦う痛快活劇、と思っていると、そのキャラクターは、無能と言われた大統領と、弓も満足に引けない非力な少年と言うへっぽこコンビで、あれれ？と思わされます。
　もっとも、オスカリは口だけは達者で、米大統領相手に「ここは俺たちの森、俺が掟だ。俺に従え」と宣言する辺り、彼なりの意地を見せて微笑ましくもあります。
　物語の方は、少年が主役と言う事で子供向けか、と思いつつ、人が次々殺され死体が転がる凄惨な描写もあり、そうとも言えないような仕上がり。
　ご都合主義的な物語はいかにもＢ級ですが、それでも黒幕を安易にイスラム過激派にせず、二転三転するドンデン返しもあって、なかなか見せ場を作ります。それを９０分弱にまとめた辺りの手腕もなかなかです。
　また、フィンランドの雄大な山岳風景には目を奪われました。

　オスカリを演じたオンニ・トンミラは、先住民の血が流れているのでしょうか、あまり北欧系らしくない個性的な顔立ちですが、なかなかいい面構えです。
　一方、ムーア大統領役には大物、サミュエル・Ｌ・ジャクソンが起用されましたが、さすがに迫力あり過ぎで……この役だったら、ジェイミー・フォックスとか、或いはベン・スティラーなどがコミカルに演じた方がよかったように思いました。

　気になったのは、描写や設定の部分で、ホワイトハウスの司令室が安っぽいのは仕方ないにしても、エアフォース・ワンの（まるで宇宙カプセルのような）脱出ポッドや、射出座席がついていると言う仰天設定など、リアリティを著しく欠く描写はいただけません。
　また、森に落ちて来たエアフォース・ワンが湖に原型を保って沈んでいるなど、矛盾する描写も気になりました。

　それにしても、月からナチスが攻めて来る「アイアン・スカイ」もそうですが、作品の出来はＢ級レベルとは言え、それでもハリウッドスターのサミュエル・Ｌ・ジャクソンを招いてこんな映画を作ってしまうのですから、フィンランド映画にはほんと油断が出来ません。
　

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ヤルマリ・ヘランダー　

　■出演

　オスカリ　・・・　オンニ・トンミラ

　ムーア大統領　・・・　サミュエル・Ｌ・ジャクソン

（その他のキャスト）
　レイ・スティーブンソン　　テッド・レヴィン　　ヴィクター・ガーバー　　フェリシティ・ハフマン
　マフメット・クルトゥルス　　ジム・ブロードベンド

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非力な二人のサバイバル　

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