ＨＥＲＯ
これは、木村拓哉主演、平均視聴率３４％を叩き出したＴＶドラマの劇場版第二弾。
映画製作に先立ち、昨年１４年ぶりにセカンドシーズンとなるＴＶシリーズを展開、これまたしっかり視聴率を稼いで、満を持しての劇場公開となりました。
ジーパン姿の型破りな検事、久利生公平は、コンパニオンの女性が死亡した交通事故を調査していた。
事故現場は、ネウストリア大使館に近く、久利生は大使館に協力を求めるがすぐに行き詰まってしまう。
一方、かつて久利生の事務官で、現在は大阪で検事をつとめる雨宮舞子が現れ、死んだ女性が暴力団絡みの恐喝事件の重要証人だったことが判明し、事件は予想外の展開を辿って……
久利生が今回直面するのは、法律家にとって越えられない最強の壁、大使館。その治外法権をどのように崩して行くかが見せ場となります。
劇中のネウストリアとは架空の国で、言語や文化、それに欧州の大国と言う辺りからフランスを連想させますが、特定のモデルはなく、日本の外交問題の象徴として描かれているに止まり、ちょっと肩透かしの感がありました。
ここは日本外交の抱える歴史認識や貿易摩擦など、もっと具体的に盛り込んだ方が見応えがあったように思う所です。
映画と言っても、その内容はあくまでＴＶドラマの延長線上。
矢嶋智人をキーマンにしたリズミカルや台詞のやりとりや、特徴ある事務所の構造を活かした人の出入りによる賑やかさの演出など、「ＨＥＲＯ」らしさは健在ですが、逆に言うと、この映画、そんなＴＶドラマの世界から一歩も踏み出そうとしないのです。
８年ぶりの松たか子の出演が話題となっているようですが、この設定と扱いにはさすがに疑問を覚える所。
なにしろ、物語内でも８年の時間が過ぎた事になっているのに、相変わらずのラブコメ展開、しかも新レギュラーの北川景子を挟んでの三角関係が映画の中心、と言うのですから……
木村拓哉も既に４０歳を過ぎ、松たか子も実生活では母親になっています。
そんな子持ちの中年男女が１４年前と変わらないラブコメを演って、一体、誰が喜ぶと思っているのか？一見さんは素直に変だな、と感じ、シリーズを通しで観ているファンだって、年月を重ねた姿を見たい、と思うのではないでしょうか？
木村拓哉は相変わらずジーパンの似合う格好よさを維持してはいるけれど、だからこそ、家庭を持ち、子供を抱えても、まだそのスタイルを貫いている久利生を格好よく演じる事が出来たのでないか、と思うのです。
大人気ドラマの安定した土台に胡座をかき、冒険をせずに同じ事を繰り返す製作者にちょっとがっかりしました。
（２０１５年 ７月２２日 横浜・ムービルにて）
（作品データ）
■監督
鈴木雅之
■出演
久利生公平 ・・・ 木村拓哉
麻木千佳 ・・・ 北川景子
雨宮舞子 ・・・ 松たか子
（その他のキャスト）
佐藤浩市 杉本哲太 濱田岳 正名僕蔵 吉田羊 松重豊
八嶋智人 小日向文世 角野卓造 田中要次 勝矢 大倉孝二
ジェームズ・Ｃ・バーンズ 森カンナ 児嶋一哉 新井浩文 イッセー尾形
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