| 天の茶助 |
これは、俳優にして「うさぎドロップ」などの監督業も手掛けるＳＡＢＵが、自身の処女小説を自ら監督して映画化したファンタジー。
天界で筆を走らせる大勢の脚本家たち。地上の人間たちは彼らの書く脚本通りに生きている。
脚本家たちは、天界を統べる“あのお方”に認められるべく、時に突飛な脚本を書き、人間たちを振り回すのだった。
そんな脚本家たちにお茶を出すのが茶助の仕事。ところが、彼の不用意なアドバイスで脚本が書き変えられ、茶助が気にかけていた女性・新城ユリが死ぬことになってしまう。
ユリの担当の脚本家には、その運命を変える術がなく、懇願されて茶助は地上に降りて行くのだが……
天界の脚本家が人々の運命を操る、突飛なファンタジーですが、要するにこれはＳＡＢＵ監督が作り上げた映画そのもの。“あのお方”たる我々観客のために、他では使えそうもない突飛で過激な人物設定を次々と投入して来ます。
また、いかにもＳＡＢＵ監督らしい、奇妙でチープな雰囲気の映画ですが、自身の小説だけに、映画世界としてはしっくり来ていた感じです。
ただ、「ユリを救う」と言う動機でもって動き出した物語は、時間を切っているのにも関わらず、妙にテンポが悪く、しかも新たな登場人物が現れる度にその人物設定を紹介して流れをぶった切ってしまうので、サスペンスが盛り上がらないのがもどかしく思えました。
しかも、うやむやのうちにユリの危機は回避され、映画は中盤以降、天界人の力を見せた茶助が人々を救う“天使様”として祭り上げられてしまい、今度は茶助が命を狙われると言う、怒濤の展開、或いは迷走を見せて行きます。ＳＡＢＵ監督ならではの疾走感も明後日の方向に向かっていては爽快さよりも戸惑いを覚えるのが正直な所。
ここで、「人を救う力を見せてしまったなら、救われなかった人は逆にその人を恨むようになる」と言う、善意と善行に対する卓見が示されもするのですが……物語としては、テーマが発散したまま終わってしまったように思え、結末もまたすっきりしないものに感じられました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督・原作・脚本
ＳＡＢＵ
■出演
茶助 ・・・ 松山ケンイチ
新城ユリ ・・・ 大野いと
（その他のキャスト）
大杉漣 伊勢谷友介 田口浩正 玉城ティナ 寺島進 黒木ＲＹＯ
ＤＪ ＫＥＩＮ Ｉ−ＶＡＮ 山田親太朗 今野浩喜 オラキオ 手塚とおる
菅田俊
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運命を、書き直す。
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