| イニシエーション・ラブ |
これは、恋愛小説が最後にミステリーに変貌すると言う評で、驚きと共にベストセラーとなった乾くるみの同題小説を、松田翔太と前田敦子の２人をメインキャストに映画化したもの。
監督は堤幸彦。
１９８７年夏、静岡。大学４年生の鈴木は、ある日、人数合わせのため仲間に誘われた合コンに参加、そこで歯科衛生士として働いているという繭子と出会い、一目で心奪われる。
引っ込み思案でルックスも冴えない鈴木は、劣等感から女性と付き合った経験もなく、自分には手の届かぬ高嶺の花と諦めていたのだが、何故か繭子は鈴木に好意を寄せ、２人は交際する事になる。
髪型やファッションも変え、鈴木は繭子に釣り合うような男になろうと努力するのだった。
やがて、春が来て就職した鈴木は、仕事の都合で上京する事になり、繭子とは遠距離恋愛になってしまう。２人の仲は、２人の間の距離のように離れて行き……
ラスト５分のドンデン返しを宣伝文句とするこの映画、映画冒頭でもネタバレ厳禁、と念を押されていますので、ネタバレは極力避けるようにしますが、「あれ、松田翔太は何処に出て来るのだろう？」と訝った、前半Ｓｉｄｅ−Ａがその仕掛け。
（まぁ……人はそこまで変わらないよね）
確かに、アイデアとしては秀逸ではあり、これを普通の恋愛映画、として紹介されていたら驚くとは思いますが、宣伝効果が効き過ぎて端からミステリーとして身構えて観てしまった分、その衝撃は小さくなってしまいました。
（正直、クリスマスのホテルの予約をキャンセルする所で、概ね読めてしまいました）
恋愛映画としてこれを観た場合、Ｓｉｄｅ−Ａはベタな上にちょっと痛く、Ｓｉｄｅ−Ｂはぐだぐだな展開なのですが、１９８０年代後半の世情を上手く取り入れた内容が懐かしく、意外にも楽しめてしまったのも事実です。
（エンドロールの’８０年代アイテム解説も楽しく、これまた懐かしい）
特記すべきは前田敦子の存在感。
カメラ目線での過剰な可愛い子ぶり、昭和のアイドル風の子供っぽさの裏に強かな女を潜ませた顔がいい。元々、前田敦子は裏表のあるイメージではありますが、そのイメージを上手く活かしたキャスティングも上手いし、それに応える前田敦子も大したものです。
映画コピーでは、「あなたは必ず２回観る」と煽っていますが、そこは観客サービスに抜かりのない堤幸彦監督だけに、“衝撃のラスト”の後に、２回観る必要がないよう、ちゃんとダイジェストをつけてくれていますので安心です。
もっとも、映画の完成度としては、“衝撃のラスト”でエンドマークを出した方が高まるのでしょうけど……
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
■出演
鈴木 ・・・ 松田翔太
繭子 ・・・ 前田敦子
（その他のキャスト）
木村文乃 三浦貴大 前野朋哉 森岡龍 矢野聖人 藤原季節 吉谷彩子
松浦雅 八重樫琴美 大西礼芳 佐藤玲 山西惇 木梨憲武
手塚理美 片岡鶴太郎
■コピー
最後の５分 全てが覆る。
あなたは必ず ２回観る。
■Ｌｉｎｋ
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