映画 ビリギャル
これは名古屋の学習塾・清藍義塾の講師であった坪田信貴（現・坪田塾塾長）が、インターネットサイトに投稿した実話を元にした小説「学年ビリのギャルが１年で偏差値を４０上げて慶應大学に現役合格した話」を「いま、会いにゆきます」の土井裕泰監督が映画化したもの。
主演は有村架純で、イメージをガラリと変えて金髪のギャルを演じる事が話題となりました。
私立の女子校に通う工藤さやかは、「毎日を楽しく過ごして欲しい」と言う母の願い通り勉強を一切せず、毎日友達と遊びながら過ごしていた。
だが、高校二年の夏休み前にさやかは喫煙が発覚して無期停学となり、エスカレーター式に入学出来る筈の女子大進学が危うくなってしまった。
娘の将来を心配した母は、さやかを進学塾に連れて行き、大学受験が出来る学力を身につけさせようとするのだが、中学以来、勉強をしていなかったさやかの学力は、小学４年生レベルでしかなかった……
この話、原作小説のタイトルが完全なネタバレで、結末が見えている為に、正直、鑑賞意欲を削がれた感がありました。
（原作はノンフィクションとしての面白さがあるのでしょうけど、物語としては……と）
ただ、さやかがどん底から学力を伸ばして現役合格する話だけでなく、プロ野球選手となる夢を息子に託す熱血親父と息子の姿を重ねて、夢を追うだけでなく、その夢に振り回される、あるいは押しつけられる、と言う、若者が目指す未来についての光と陰を描く物語がよく、結果としてはよく出来た青春映画となっていました。
また、父親との確執を持つ同窓の塾生の男子生徒のエピソードも重ねる事で､「反発と憎悪」よりも「尊敬と愛情」の方がより大きな行動のエネルギーを生む、とした辺りを積極臭くなく描く辺りにも交換が持てます。
結果、判っている筈のクライマックスできちんと感動させられてしまったのですから、これは見事なものと思います。
さやかを演じる有村架純は、濃いギャルメイクも名古屋弁混じりのギャル言葉も微妙に馴染んでいない所が可愛らしい。また、本作で髪をばっさりと切ってしまうのですが、これまでほっそりとして細面と思っていた有村架純が意外と頬の丸い健康的なルックスだったと言う事も再発見。
既に大学も卒業してしまいそうな年齢ですが、まだまだ学生服が似合います。
ただ、どうしても“いい子”のイメージが強く。元々出来る子が、少し横道に逸れていただけ、と言うように見えてしまうのは仕方のない所でしょうか……
気になったのは、この話、親子の美談のように語られており、学校が悪者にされているのですが……そもそも悪いのは勉強する気がないさやかと、彼女をそう育てた母親に問題があるのではないか、と言う事。
無期停学をきっかけに塾に通う事で結果として学力だけでなく一般常識をも身につけたさやかですが、これが友達たちのように大過なくエスカレーター式に大学まで進学し、卒業してしまっていたとしたら、結局、そのツケはさやかが己の人生で払う事になった筈で……そんな子育てをした母親を誉めるのはどうかと思ってしまいました。
（２０１５年 ５月１５日 ＴＯＨＯシネマズ上大岡にて）
（作品データ）
■監督
土井裕泰
■出演
工藤さやか ・・・ 有村架純
坪田義孝 ・・・ 伊藤淳史
（その他のキャスト）
野村周平 松井愛莉 大内田悠平 奥田こころ あがた森魚
安田顕 阿部菜渚美 山田望叶 矢島健一 中村靖日 峯村リエ
蔵下穂波 吉田羊 田中哲司
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