ＴＨＥ ＮＥＸＴ ＧＥＮＥＲＡＴＩＯＮ
パトレイバー 首都決戦
これは、２０１４年からメディアミックス展開されている、実写版パトレイバー「ＴＨＥ ＮＥＸＴ ＧＥＮＥＲＡＴＩＯＮ パトレイバー」の集大成となるオリジナル長編映画版。
監督・脚本は押井守。
レインボーブリッジが爆破される事件が発生。警察は、偶然撮影されていた現場付近の映像から、これが特殊な軍用ヘリからのミサイル攻撃であることを突き止めた。
それは、数日前に陸上自衛隊から、パイロットごと行方不明になった最新鋭ヘリコプター「グレイゴースト」。機関砲とミサイルで武装した上に、熱工学迷彩で周囲に溶け込み消えてしまう“見えないヘリコプター”だ。
足（航続距離）が短く、手間のかかるヘリを飛ばすには支援する兵站部隊がいるはずで、単独犯ではあり得ない。
特車二課の後藤田は、公安部の高畑警部と協力して捜査を進め、そして浮かび上がってきたのは、１０数年前に起きたあのクーデター未遂事件だった……
映画版の世界は「機動警察パトレイバー２ Ｔｈｅ Ｍｏｖｉｅ」の後日談、と言う設定ですが、この映画は「パトレイバー２」の後日談どころか、その展開までも「パトレイバー２」そのままで、ほぼ焼き直しと言う趣。
しかも、予算が充分ではなかったのでしょう、物語のスケールは小さくなってしまいました。
勿論、押井守監督には、そんな事は承知のはずで、むしろ“焼き直し”である事に意味がある、とは言うのですが、正直な話、そこに説得力は感じられませんでした。
最大の問題はクライマックスとなる戦闘ヘリとレイバーの一騎打ち。
レイバーが殆ど活躍しない、と言う点では「パトレイバー２」もいい勝負でしたが、その少ない機会をテロの首謀者を逮捕するために突入する、と言う物語上もクライマックスとなる、大きな目的の為に敵のアジトに殴り込むシーンに重ねたのに対し、今度の劇場版では、特車２科棟を破壊された、その報復、と言う目的でしかありません。
正直な話、テログループはその首謀者以下の大半のメンバーを公安警察が拘束して決着がついており、補給の受けられないヘリは燃料が尽きるまで飛んで、それでお終いなのです。
戦闘ヘリが律儀に付き合ってくれたから格好がついたものの、逃亡を計ったらどうなったのか？――こんな説得力のないクライマックスシーンもないでしょう。
予算がないならないなりに、その中で物語を組み上げるべきですし、押井守ならば、それでも物語も見せ場も作れるはず。
確かに都心上空を飛ぶ戦闘ヘリ、そして空中戦を繰り広げると言うビジュアルのインパクトは確かにあり、表層だけを見ていけば、様々なこだわりの見られるアクション映画として、邦画として及第点を与えられるものにはなっています。
然しながら、それでも１９９３年に東京を戦場にした「パトレイバー２」のインパクトには及びません。
その後、１９９５年の阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件で、大都市が崩壊、あるいは戦場のような様相を見せ、軍用車と自衛隊員が街中で活動する、と言うのが現実となり、我々もいつの間にかそうした風景に馴らされてしまいました。
だからこそ、自衛隊の活動範囲が広げられようとするこの２０１５年において、未来を予見するようなインパクトのある「絵」を見せて欲しかったと思うのです。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督・脚本
押井守
■出演
泉野明 ・・・ 真野恵里菜
塩原佑馬 ・・・ 福士誠治
シバシゲオ ・・・ 千葉繁
後藤田継次 ・・・ 筧利夫
カーシャ（エカテリーナ・クラテヴナ・カヌカエヴァ） ・・・ 太田莉菜
大田原勇 ・・・ 堀本能礼
山崎弘道 ・・・ 田尻茂一
御酒屋慎司 ・・・ しおつかこうへい
灰原零 ・・・ 森カンナ
（その他のキャスト）
藤木義勝 高島礼子 吉田鋼太郎
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