| 龍三と七人の子分たち |
これは北野武監督１７本目となる新作映画で、老いたヤクザを描くコメディ。
評判は上々のようで、公開以降、満席を連発しているようです。
かつて“鬼の龍三”と恐れられた武闘派ヤクザ、高橋龍三、７０歳。しかし、とうの昔に組は解散。今は息子の家族と同居して、無駄に元気な余生を過ごしていた。
ある日、龍三がオレオレ詐欺のターゲットになってしまった。しかし、詐欺グループの受け子は、龍三に怖じ気づいて逃げ出し、一件落着したのだが……気づいてみればかつての自分たちの縄張りが、「京浜連合」を名乗る暴走族上がりの半グレ共に好き放題にやられているではないか。
龍三は昔の仲間たちを集め、新組織「一龍会」を結成するが……
現役引退した老人たちが「昔取った杵柄」とばかりにまた暴れ出すというアイデアは面白く、“元気な老人”と言うのも現代の時勢を上手く掬い上げた感があります。
半グレや、オレオレ詐欺もタイムリーですし、老人相手の詐欺商法をネタにしてしまう辺りにも苦笑させられます。
物語は、いかにも北野コメディらしく構成はゆるゆる。元やくざの老人たちが、悪党と対決するという大まかな流れに、小ネタとギャグを詰め込む、と言う感じになっています。ドラマとしての大きなうねりはなく、展開も気まぐれで、行き当たりばったりなのですが、それがムラっ気の老人らしく感じられるのは贔屓目に見過ぎでしょうか。
北野武のコメディと言うのは実はあまり笑えないもので、爆笑と言うよりも、不謹慎さに吹き出してしまうような感じのものが多い（「赤信号、みんなで渡れば怖くない」のツービートの漫才からしてそんな感じでした）のですが、この映画、不謹慎なのは相変わらずですが、意外にも親切丁寧な説明があり、なかなか面白い感じにはなっていました。劇場に笑い声が上がるのもしばしばで、その辺りも人気の理由のように思います。
また、見せ場を作っているのもこの映画の特色。
クライマックスは、「京浜連合」本部への殴り込み（ここで、はばかりのモキチの遺体を盾にする不謹慎なギャグで笑いを取ります）から、逃げる「京浜連合」のボスを商店街をバスで追い回すカーチェイス。
ただ、この辺り、展開にもアクションにももう少しスピード感が欲しかった所ではあるのですが……
この映画、文化庁の助成を得て製作されているのですが、それは、要するに北野監督もファンだったと言う往年の「ヤクザ映画」へのレクイエムのようなものでしょう。
その意味では、この映画、作られるのが数年遅かったように思います。
この映画を、今はなくなってしまったヤクザ映画……もとい任侠映画へのレクイエムとするならば、ここはやはり、健さんと文太兄ぃの共演で作って欲しかったところです。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
北野武
■出演
龍三親分（高橋龍三） ・・・ 藤竜也
若頭のマサ ・・・ 近藤正臣
はばかりのモキチ ・・・ 中尾彬
（その他のキャスト）
品川徹 樋浦勉 伊藤幸純 吉澤健 小野寺昭 安田顕 矢島健一
下條アトム 勝村政信 込江海翔 清水富美加 萬田久子 ビートたけし
■コピー
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