これは、ウディ・アレン監督の新作。
　凄腕奇術師が美貌の霊能力者のトリックを暴こうとするのだけど、逆に彼女に惚れてしまって……と言うラブコメで、往年のスクリューボールコメディの趣のある楽しい映画になっています。

　中国から来た魔術師、ウェイ・リン・スーとして大人気の英国人奇術師、スタンリー・クロフォード。
　ベルリンで公演中のスタンリーの元に、幼馴染みのハワードが相談事を持ち込んでくる。共通の友人であるカトリッジ家にアメリカから来た若い女性霊能力者が入り込み、降霊術で家の人たちから大金をせしめているというのだ。
　そのトリックを暴いてカトリッジ家の面々の目を覚まさせるべく、スタンリーはコートダジュールにあるカトリッジ家の別荘を訪ね、霊能力者ソフィ・ベイカーに対面するのだが……

　この映画の主人公たるスタンリーのキャラクターは、往年の天才奇術師で「脱出王」ことハリー・フーディーニをモデルとしています。フーディーニはその奇術師としての才能を活かして、霊能者と称する人たちのトリックを次々に暴いていったのですが、映画の物語は明らかにこのエピソードを下敷きとしています。
　しかし、この映画では、ソフィのトリックを解く前に、スタンリーが恋の魔法に捉えられ、世の中には、理屈では語れないものがある、と言う事を知るのです。
　まぁ、恋が理性の目を曇らせる、正に“恋は盲目”な恋物語なのですが、「タネも仕掛けも判っているよりも、ドキドキする方が楽しいよね？」と言うウディ・アレンならではの酸いも甘いも噛み分けて来た人生訓には頷かざるを得ないでしょう。
　また、往年の映画を思わせる映画を今作る、と言う意外さや、オールドスタイルのファッションをキュートに着こなすエマ・ストーンにも魅了されます。

　なかなか楽しい映画なのですが、ちょっと気になったのが、スタンリーを演じたコリン・ファース。
　初めて胸ときめく恋に落ちる様を、さすがの演技力でこれまたキュートに演じてはいるものの、何せエマ・ストーンとの年齢差が親と子ほどある（２８歳差！）のはカバーし難く、理屈が先走る一本調子な性格が正されていく展開からも、この役はもっと若い俳優の方が相応しかったのではないでしょうか？

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■監督

ウディ・アレン　

　■出演

　スタンリー・クロフォード　・・・　コリン・ファース
　ソフィ・ベーカー　・・・　エマ・ストーン

（その他のキャスト）
　サイモン・マクバーニー　　キャサリン・マコーマック　　アイリーン・アトキンス　　エリカ・リーセン　　ジェレミー・シェイモス
　ハミッシュ・リンクレイター　　マーシア・ゲイ・ハーデン　　ジャッキー・ウィーヴァー

　■コピー

この恋、タネも仕掛けもありません！　

　■Ｌｉｎｋ

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