| ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜 |
これは、劇団「大人計画」の松尾スズキが、いがらしみきおの漫画「かむろば村へ」を映画化したもの。
お金アレルギーになってしまった青年が移り住んだ奇妙な村での田舎暮らしを描くコメディです。
銀行勤めでお金の怖さを思い知り、現金に触ることさえ出来ない“お金アレルギー”になってしまった青年高見。彼は仕事を辞め、一円も使わずに生活しようと東北の集落にやって来た。
当初、「田舎暮らしを甘く見るな」とあきれ顔の村人達だったが、妙に面倒見のいい村長の与三郎を始め、親切な村人にも助けられてタケと呼ばれるようになった高見は何とか村で暮らし始める。
ある日、そんな村に怪しい男が現れて……
“お金アレルギー”と言うタケを演じるのは松田龍平。独特の個性を、本作では抑え気味にしつつも、しっかり笑いを取りますが、この映画を支配するのは、何と言っても村長の与三郎を演じる阿部サダヲの怪演。更に、西田敏行演じる“神様”が登場して、タケの存在感はどんどん薄くなってしまいます。
なるほど、これはそもそも“神様”の居場所である「かむろば村」を描いた物語だったのだなぁ、と思わされます。
映画としてはタケの悪戦苦闘に加え、与三郎を始めとする村の奇妙な住民が次々に登場する前半は物語に勢いがあって面白いのですが、与三郎の過去のいきさつや、“神様”の存在、そして村長選挙まで盛り込んだ内容をまとめ切れず、最後はそれらを妙に小さくまとめた感があるのが残念。
ハチャメチャになってもいいので、当初の勢いで突っ走るか、あるいは、タケを狂言回し役に割り切り「かむろば村」と村長を中心に描いた方がよかったようにも思えました。
また、かむろば村には小さいながら商店があり、道路も綺麗に舗装されて、映画が言う「限界集落」に見えないのも気になりましたし、「田舎暮らしを甘く見るな」と言いつつ、田植えをしたら（その田植えも村人にやって貰うのですが）、その後はやることないのでバイトしたら？などと言う、映画製作陣自体が田舎暮らしと農業を甘く見ているような台詞も気になった所です。
（こうした部分、「リトル・フォレスト」の方がよく描けていたように思います）
“自分を捨てる”と言うテーマにはぴんと来なかった部分はあるものの、それでも芸達者な出演者によるドタバタ喜劇としては楽しめました。
あと、松たか子と二階堂ふみのエロい描写も見逃せない所でしょう。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
松尾スズキ
■出演
高見武晴（タケ） ・・・ 松田龍平
天野与三郎 ・・・ 阿部サダヲ
（その他のキャスト）
松たか子 二階堂ふみ 西田敏行 片桐はいり 中村優子 村杉蝉之介
伊勢志摩 オクイシュージ モロ師岡 松尾スズキ 田中仁人 宍戸美和公
近藤公園 荒川良々 皆川猿時 顔田顔彦 堀田眞三 三谷幸喜
■コピー
一円も使わないで生きていくためにこの村にきました
■Ｌｉｎｋ
［戻る］