| イントゥ・ザ ウッズ |
これは、「赤ずきん」や「シンデレラ」など、お馴染みのおとぎ話の「めでたしめでたし」のその後を描いたトニー賞受賞のミュージカルを映画化したもの。
監督は、「シカゴ」のロブ・マーシャル。
昔々、とある王国の森の傍にある小さな町でパン屋を営む夫婦がいました……と物語は始まります。
夫婦仲はいいのだが子宝に恵まれない夫婦の前に魔女が現れ、子供を授からないのはパン屋の主人の父親が犯した罪による呪いのせいだと知らされる。
呪いを解くにはこれから３日間、青い月が出ているうちに、森の中で「ミルクのように真っ白な牛」「血のように赤いずきん」「トウモロコシのように黄色い髪」「金色に輝く靴」を探す事だと言われた夫婦は……
赤ずきんにシンデレラ、「ジャックと豆の木」のジャックにラプンツェルと、お馴染みの登場人物が揃ったこの物語は、さしずめ、おとぎ話版「アベンジャーズ」と言う所でしょうか。
映画コピーは、おとぎ話の“その後”を描く、と言う事ですが、そこは万人向けの映画作りがモットーのディズニーだけに、定番の物語でさえも、最初っから始めてしまうので、まず、お馴染みの「めでたしめでたし」までに結構時間がかかります。
登場人物らが森に踏み込んで行く導入部こそ、わくわくしたのですが、お馴染みの物語のダイジェストを見せられるような前半の展開には、ぱっとしない楽曲と、新鮮味がなく､華やかさに欠けるビジュアルせいもあって、いささか退屈してしまいました。
出演者としては、トニー賞ノミネートのアナ・ケンドリックが本領発揮。また、メリル・ストリープは最早別格の貫禄を見せます。赤ずきん役のリラ・クロフォードや、パン屋の妻を演じたエミリー・ブラントも、しっかり歌える所を見せてはいるものの、全体としてミュージカルらしいノリとテンポを見せられておらず、名手ロブ・マーシャルにしてどうしたのか、と思ってしまう程でした。
物語としては、最近のディズニーが連発する、ディズニーのお約束である“おとぎ話のセオリー”を崩すもの。
「アナと雪の女王」や「マレフィセント」では、セオリーを崩し、女性主体に物語を再構築していましたが、この物語は、おとぎ話が伏せて来た、この世の闇――怨みねたみ、強欲に嫉妬、そして策略――を主人公らに与えて向き合わせることで、「現実」主体で物語を再構築しようとするのです。
赤ずきんはおばあさんに持っていくパンをパン屋で万引きし、シンデレラは打算で靴を置いて行く。一方の王子だって女と見ればものにする快楽主義者……と、みんな自分勝手な人物に描かれています。
こうした主人公らが、破滅に瀕したその責任を他人になすりつけようと言う醜い言い争いを歌にした場面が、この物語の真骨頂だと思います。
ただ、そこまで辿り着くまでが長いし、物語の展開――誰が死に、誰が姿を消して物語がまとまるか――にもまったく納得出来ず……連戦連勝のディズニーにしても、これは外しているように思います。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
ロブ・マーシャル
■出演
パン屋の夫婦 ・・・ ジェームス・コーデン＆エミリー・ブラント
魔女 ・・・ メリル・ストリープ
シンデレラ ・・・ アナ・ケンドリック
王子 ・・・ クリス・パイン
赤ずきん ・・・ リラ・クロフォード
（その他のキャスト）
ジョニー・デップ トレイシー・ウルマン クリスティン・バランスキー ダニエル・ハットルストーン マッケンジー・マウジー
ビリー・マグヌッセン ルーシー・パンチ タミー・ブランチャード リチャード・グローヴァー フランシス・デ・ラ・トゥーア
■コピー
“おとぎ話の主人公たち”のその後……
■Ｌｉｎｋ
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