これは、映画「アイアンマン」の監督で知られるジョン・ファヴローが、製作・脚本・監督・主演を務めて作り上げた映画。
　要は、そこまでやって作りたかった映画、と言う事ですが、これがなかなか面白い映画に仕上がっています。
　ただ、邦題サブタイトルは、これは明らかにネタバレで、これはどうにかならなかったものでしょうか？

　ロサンゼルスの老舗フレンチレストランでシェフを務めるカール・キャスパー。
　来店する料理評論家に新作の創作料理を用意しようとするが、定番メニューしか認めないオーナーは却下、評論家にも酷評されてしまう。それが原因でオーナーと衝突して店をクビになったカールは、慣れぬツイッターで評論家を中傷、炎上騒ぎを起こして業界からも居場所を失ってしまう。
　失意の中、離縁した妻イネスに誘われ、息子パーシーの子守り役として故郷マイアミを訪れるが……　
　
　これは、才能に恵まれながらも（だからこそ、か）大人になり切れていない男が、どん底に突き落とされたのちに成長して再起するサクセスストーリーであり、親子の絆と家族を取り戻すファミリームービーでもあり、さらに親子のアメリカ横断行を描くロードムービーでもある、と言う盛り沢山の内容の映画で、しかも、テーマとなるのは美食で、画面を彩る美女にも抜かりなく、Ｔｗｉｔｔｅｒと言う流行の新味も利かせ、名優、ダスティ・ホフマンを引っ張り出して箔付けするなど、映画をよく知る采配っぷりは見事なもの。
　映画内で、シェフを演じるジョン・ファヴロー、映画作りにおいてもなかなかの名シェフっぷりを見せているのではないでしょうか？
　（ただ、ラテン系美人のソフィア・ベルガラ演じる元妻のイネスに、スカーレット・ヨハンソン演じる愛人のモリーがいる、と言う“両手に花”状態は、如何にプロデューサー権限があろうともさすがにやりすぎではないでしょうか）

　映画の作りはノリのいいコメディで、笑える部分も多く、どん底に突き落とされたカ−ルも、深刻な状況に陥る前に事態が急変していく、と言う展開。
　（しかも、元妻の口効きで、カールに無償でフード・トラックを提供するのは、アイアンマンのロバート・ダウニーＪｒ．です）
　それでいて、嫌味なく家族の再生を描いてしまう、この物語の完成度は大したものだと思います。

　そして、この映画、ジョン・ファヴローが自分自身の境遇を描いたのではないか、と深読みをしてしまいます。
　ディズニーに買収されたマーベルスタジオを飛び出し、ひとりで製作から主演まで務めて映画を作る“個人営業”をするジョン・ファヴローがカールだとすると、定番メニューしか認めない石頭のオーナーは誰なのか、カールから居場所を奪ったのは誰なのか……と。

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■製作・監督・脚本

ジョン・ファヴロー　

　■出演

　カール・キャスパー　・・・　ジョン・ファヴロー

（その他のキャスト）
　ソフィア・ベルガラ　　ジョン・レグイザモ　　スカーレット・ヨハンソン　　オリヴァー・プラット　　ボビー・カナヴェイル
　エイミー・セダリス　　エムジェイ・アンソニー　　ダスティン・ホフマン　　ロバート・ダウニーJr.

　■コピー

　■Ｌｉｎｋ

http://chef-movie.jp/　

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