さらば、愛の言葉よ
ＪＥＡＮ−ＬＵＣ ＧＯＤＡＲＤ
これは、「勝手にしやがれ」などで知られるヌーヴェルヴァーグの巨匠、ジャン＝リュック・ゴダール監督の新作。何と、ゴダール監督、８４歳にして初の３Ｄ作品、と言う意欲作です。
物語は、要約のしようがありません。人妻と男の愛憎の進行と、そして一匹の犬。この映画は、物語るものではなく、映し出すものなのです。
その注目の映像は、民生機を使用したもので、あたかもアマチュアがそうするように、ゴダール自身がカメラをポケットに入れ、愛犬と散歩しながら撮影した風景が多用されているそうです。
（そう言えば、ゴダール監督はカメラの小型化など機材と映像技術の開発に熱心に取り組んでいましたっけ）
３Ｄ映像は、そうした既存の民生機の３Ｄカメラの他に、デジタル一眼レフ、キヤノン・イオス５Ｄを２台自家製のマウントで固定して３Ｄカメラに改造したものが使われています。このオリジナルの３Ｄカメラの映像は、これまでの３Ｄ映画になかった強烈な飛び出しと、違和感さえある奥行き生み、単なる立体視を超えた、映像世界に驚きます。
そして、極めつけは３Ｄ効果どころか、その２台のカメラが別々に撮った被写体を３Ｄ映像の左右に映し出すのです。３Ｄメガネをかけていると、ひとつの画面を観ているのに、右目と左目の観ているものが異なり、それを脳の中で合成させられると言う、現実では絶対にあり得ない、強烈な視覚効果が生まれます。これには、カンヌ映画祭でも劇場内がどよめいたと言いますが、それも当然でしょう。
そして、そこにステレオ効果を逆手に取ったような音響が被さります。
もう、脳みそをかき回されるような感覚――これは、映画そのもののの表現力を問う芸術でしょう。
映画上映中、「次に何を見せてくれるのか」と言う事自体がサスペンスとなって、胸が高鳴りっぱなしの６９分でした。
物語性は希薄であり、映画にドラマを求める人には全く勧められませんが、これは強烈な映像体験で、映画と言う表現の可能性を考えさせられるものでした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
ジャン＝リュック・ゴダール
■出演
エロイーズ・ゴデ カメル・アプデリ リシャール・シェヴァリエ ゾエ・ブリュノー
ジェシカ・エリクソン クリスチャン・グエゴーリ ロクシー・ミエヴェル
■コピー
男と女、一匹の犬と最期の言葉
■Ｌｉｎｋ
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