ＭＡＰＳ
ＴＯ ＴＨＥ
ＳＴＡＲＳ
マップ・トゥ・ザ・スターズ
これは、鬼才デビッド・クローネンバーグ監督の新作。
落ち目のハリウッド女優のハバナは、女優であった亡き母親を描く映画で、母の役の得ようと懸命の工作を続ける一方で、母の亡霊に悩まされ、セラピストのスタッフォードによる治療を受けていた。
その頃、顔に火傷の痕がある少女アガサがハリウッドへとやって来る。やがて、ハバナの個人秘書として働く事になったアガサだが、彼女はスタッフォードの娘で、ある問題を起こして施設に入れられていたのだ。
そして、アガサがハリウッドに戻った事をきっかけにして、彼女の周囲の歯車は狂い始めて……
アガサ役のミア・ワシコウスカは、かつての“陰のある美少女”から、最近ではこうした癖のある役が板に着いて来た感がありますが……この映画で存在感を放つのは、やはり、ジュリアン・ムーア。己のイメージとも被る、色香と人気が衰えて来たかつての人気女優と言う役を熱演。ボカシの入るようなベッドシーンや、トイレでの用足しのシーンなど、えげつないとも思えるシーンに果敢に挑んでおり、これはカンヌでの女優賞受賞にも頷けると言うものです。
かつて、「裸のランチ」や「ザ・フライ」など、グロテスクな映像表現で知られたデビッド・クローネンバーグ監督ですが、「イクジステンス」を最後に、グロテスクな“もの”を映し出す事から、精神的にグロテスクな特異なドラマを描く方に移行して来た感があります。
この映画も、そうしたグロテスクさを心の中に抱え込んだ人間を描くものになっています。
近親相姦や、家庭内暴力（児童虐待）と言う歪んだ家庭の問題に、ハリウッドセレブの乱れたモラル、更には亡霊までが登場する、醜くも毒々しいドラマは、時に生と死との境目さえ曖昧な“ハリウッド”と言う舞台こそ相応しい。
この映画は、そんな“ハリウッド”の地獄巡りをするものであるのです。
（この映画の脚本を手掛けたブルース・ワグナーはかつてハリウッドでリムジン運転手をしていた事があり、その経験が反映されているようです）
映画は、混沌と喧噪の中で、キャリア（世間的）の死と、肉体的な死に辿り着きます。
そして、そこで初めて気づかされるのです。
自分とは縁遠い、別の星の話のように思えていた“ハリウッド”の世界も、自分たちと同じ、この星の上にある事を……
（２０１５年 １月 ３日 にて）
（作品データ）
■監督
デビッド・クローネンバーグ
■出演
ハバナ ・・・ ジュリアン・ムーア
アガサ ・・・ ミア・ワシコウスカ
スタッフォード ・・・ ジョン・キューザック
キャリー・フィッシャー ・・・ 本人
（その他のキャスト）
エヴァン・バード オリヴィア・ウィリアムズ ロバート・パティンソン キアラ・グラスコ サラ・ガドン
ドーン・グリーンハルグ ジョナサン・ワットン ジェニファー・ギブソン ゴード・ランド ジャスティン・ケリー
ニーアム・ウィルソン エミリア・マッカーシー
■コピー
その祈りは、永遠の呪い。
■Ｌｉｎｋ
［戻る］