| 西遊記 はじまりのはじまり |
これは、「少林サッカー」のチャウ・シンチーが、日本でもよく知られる中国の伝奇小説「西遊記」の始まる前……最近流行の「エピソード：０」を描く冒険活劇。
「わらべ唄三百首」が必殺（？）技の妖怪ハンター・玄奘。
ある日、川に棲み村人を襲う妖怪と遭遇した玄奘は、村人と共同して妖怪を捕らえたものの、肝心の「わらべ唄」が効かず、美人妖怪ハンターの段に助けられ、手柄を横取りされてしまう。
己の力の無さを嘆く玄奘に師匠は「何かが足りなかった」と説くが……
「西遊記」の前日譚を描く本作ですが、この映画がユニークなのは、そこで、三蔵法師こと玄奘三蔵を主にしたこと。
本来の「西遊記」では、孫悟空の生まれから天界での乱暴狼藉、そして五行山に生き埋めにされるまでをプロローグに置き、それ故に孫悟空こそが主人公のようになってしまっているのですが、このチャウ・シンチー版「西遊記：エピソード０」は、半人前僧侶の玄奘が、悟りを開いて玄奘三蔵になるまでを描くものなのです。
玄奘三蔵は、原作では登場時より人徳に優れた聖僧と敬われる存在でしたし、日本ではＴＶドラマの影響で、女性的な美青年（演じるのが夏目雅子でしたからねぇ）の印象があるだけに、この映画の髪の毛ぼさぼさ、やることなすことぴりっとしないぼんくら青年が玄奘と言うのは意外でもあり、そんな彼が三蔵法師になる、と言う物語は確かに面白いアイデアと思いました。
また、音楽選曲も曲者。若い人には判らないでしょうけど、何せ予告編から「Ｇメン’７５」を使うんだからなぁ……
そして、その内容は、チャウ・シンチーならではの奇想天外なアクションかと思っていましたが、本作ではコメディ要素が勝ち、アクション・コメディと言うよりもほぼドタバタ喜劇。
冒頭の川の妖怪の捕獲劇などは、大道具を使って飛んだり跳ねたり、ディズニーランドのアトラクションか、ドリフのコントか、と言う趣。
また、コメディ色が強いと言っても、そこはチャウ・シンチー、相変わらず、ギャグはベタだししつこいし、しかも下品で、ちょっと残酷。これは観る人を選ぶ類いの映画だと思います。
しかし、同時にサービス精神旺盛なのもチャウ・シンチーならでは。アクション、コメディ、ホラーにファンタジー、更にロマコメ要素も詰め込んでいます。
クライマックスは悟空大暴れ、皆殺し劇の後の大逆転で、チャウ・シンチーお得意の大風呂敷も見事に決まり、落ち着く所に落ち着かせたのは見事なもの。
これは是非とも本編となる天竺への旅を見せて欲しいものです。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
チャウ・シンチー
■出演
玄奘 ・・・ ウェン・ジャン
段 ・・・ スー・チー
孫悟空 ・・・ ホアン・ボー
（その他のキャスト）
ショウ・ルオ クリッシー・チョウ シン・ユー リー・ションチン チウ・チーリン
■コピー
誰もが知っている「西遊記」
誰もが知らなかった「孫悟空」
■Ｌｉｎｋ
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