嗤う分身
これは、ドストエフスキーの「二重人格」をモチーフとした不条理映画。
監督は、これが２作目の長編映画だと言うリチャード・アイオアディ。主演は「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグと、「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカ。
情報処理会社で働くサイモン・ジェームズは影の薄い男だ。仕事は出来るのだが、存在感がないので功績を認められす、勤めて７年になるのに、受付係からは顔も憶えてもらえない。
そんな彼の慰めは、同じ会社でコピー係をしているハナの存在だった。彼女も自分と同じ、孤独を抱えた人間なのだが、彼には遠くから眺めている事しか出来ずにいた。
そんなある日、会社に新人社員が入ってきた。彼の名はジェームズ・サイモン。社交的で上司や同僚のウケもよく、仕事は出来ないがサイモン・ジェームズの成果を横取りして功績を上げていた。そんな彼の顔は、サイモン・ジェームズに瓜二つだった……
この映画の特色は、何と言っても独自の映画世界。
決して日の光が差さない永遠の夜が続く、電灯の黄ばんだ光が照らす、セピア色がかった世界。電車やエレベーター、コピー機と言うお馴染みの機械も、どこか古臭いパストフューチャー的な味付けがされています。
そんな中で描かれる、主人公、サイモン・ジェームズを巡る様々なトラブルは、まるで悪夢のような正に不条理なもの。
そして、現れる正反対の自分――その、もうひとりの自分との間の決着の形は予想を大きく外れるものではなく、不条理ものらしく、そこには謎解きも説明も一切ありません。
（そもそも、夢に合理性も何もない訳ですが）
面白いと言うタイプの映画ではありませんが、正に悪夢を見ているような、特異な世界とその展開には引き込まれます。
映画挿入歌として遣われる、坂本九の「上を向いて歩こう」や、ジブルー・コメッツの「草原の輝き」、「ブルー・シャトウ」も面白い効果を生んでいました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
リチャード・アイオアディ
■出演
サイモン・ジェームズ／ジェームズ・サイモン ・・・ ジェシー・アイゼンバーグ
ハナ ・・・ ミア・ワシコウスカ
（その他のキャスト）
ウォーレス・ショーン ヤスミン・ペイジ ノア・テイラー ジェイムズ・フォックス キャシー・モリアーティ
フィリス・サマーヴィル ガブリエル・ダウニー ジョン・コークス クレイグ・ロバーツ
スーザン・ブロンマート ブルース・バイロン J・マスシス, トニー・ロア サリー・ホーキンス クリス・オダウド
カーストン・ウェアリング パディ・コンシダイン ナタリー・コックス
■コピー
お前は、俺だ。自分は、誰だ。
■Ｌｉｎｋ
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