花
宵
道
中
これは、２００６年に「女による女のためのＲ−１８文学賞」を受賞した宮木あや子の同題小説を映画化したもの。
天保８年。吉原大火により見世を焼失した吉原の遊郭、山田屋は吉原外の仮宅での営業となった。
特別な理由がない限り大門から出られない吉原に比べると仮宅では女たちの自由も多い。山田屋の看板女郎の朝霧は、妹分の八津と一緒に近所の神社の縁日見物に出かけ、そこで若い染め物職人、半次郎と出会う。
年季明けまであと１年に迫った今まで、間夫も作らず、男に心許さずに来た朝霧だが、半次郎は、何故か朝霧の心を捉えて放さないのだ……
この映画の主演は、「家なき子」以来２０年ぶりの映画出演となる安達祐実。彼女がオールヌードでの濡れ場を演じる事でも話題となりました――と言うより、そうした話題性がなければ劇場公開されずにビデオスルーとなりかねない映画ではないでしょうか。
映画の撮影は、数々の時代劇作品を手掛けてきた老舗の東映京都撮影所で行われたそうで、予算の割には、美術や衣装などもしっかりしています。ただ、ビデオ撮影のせいか、艶のない映像が何とも安っぽいのにはげんなりしました――ただ、その後、冬のシーンが多い内容には合っているか、と思い直しましたが。
主演として朝霧を演じる安達祐実は、大きな瞳の自己主張が強い顔立ちが時代劇に馴染まず、独特の声も同様。台詞回しも何だか拙く、かつての天才子役の輝きは何処へ、とがっかりさせられましたが、それでも不躾な客に啖呵を切る辺りは、さすがの上手さ。映画が進むにつれ、見直した次第です。
話題の濡れ場は、年齢を感じさせない初々しい裸身を晒すもので、正に体当たりの演技ですが、いささか長くてしつこい。ＡＶを観ている訳ではないのですから、裸とセックスばかりではなく、やはり演技と物語を見せて欲しいものです。
吉原遊郭を描いた作品は数多ありますが、この物語は、火事で焼け出されて吉原の外の仮宅で営業しているという設定に工夫があって面白いと思います。
大門の外に出られない吉原の女が客ではない一般の男性と出会う、と言う事はまずあり得ないのですが、それが仮宅だから起き得る、と言う狙いはいい。でも、この映画、それを上手く活かせていないのが惜しい。この内容なら、半次郎が吉田屋の動向を探る目的で、朝霧の客になった……と言う展開でも成立してしまいそうに思えます。
また、半次郎が縁日で出会った朝霧と恋に落ちる、と言う設定もいささか不自然。
江戸時代ならば身なりや服装で、身分や職業が判ってしまいます。人妻、そして女郎は眉を落とし、お歯黒をつけるもの。確かに時代劇映画ではその辺りを省略してしまうのが殆どなのですが、実際には、半次郎は朝霧を出会った時に、彼女を女郎か、縁日見物の人妻だと思ったはずで、色恋沙汰の相手とは見ないように思うのです。
とにかく、折角の設定と物語を活かせていないのは、何とも勿体ないことのように思います。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
豊島圭介
■出演
朝霧 ・・・ 安達祐実
半次郎 ・・・ 淵上泰史
八津 ・・・ 小篠恵奈
（その他のキャスト）
高岡早紀 津田寛治 三津谷葉子 多岐川華子 立花彩野
不破万作 松田賢二 中村映里子 友近
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たとえ叶わぬ恋だとしても、美しい花を咲かせたい
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